久元 喜造ブログ

2020年2月11日
から 久元喜造

駅ピアノ「西神中央」の風景


1月17日に放映されたNHK・BS1 駅ピアノ「神戸・西神中央」。
さまざまな人々が登場していました。
小学校の音楽の先生になって半年の、23歳の女性もそのひとりです。
「毎日大変だが、やりがいを感じている」と。
弾いていたのは、シューマンが作曲し、リストが編曲した『献呈』。
音大のとき、よく弾いていた「なじみの曲」だそうです。
私もこの曲が大好きです。

「夢は?」と訊かれ、若い音楽の先生はこう答えていました。
「夢?」
「子どもたちに、10年か20年か後になって、あのとき先生がいたから、先生がいたから、音楽が楽しいと思えると、そんな子どもが増えてくれたら・・・それが私の夢です」

素晴らしい夢ですね。
私にもそんな先生がいたのですよ。
神戸市立山田中学校のとき、音楽の教師になったばかりの先生がそうでした。
当時まだ20歳くらいだったかもしれません。
先生の音楽の授業は本当に楽しかった。
刈り取りが終わった田圃に出て、車座になってみんなで歌を歌ったこともあった。
どういうわけか1回きりで終わってしまったけど、だからよけいにあのときのことをよく覚えているのかもしれません。
10年、20年どころか、半世紀経っても、音楽はずっと好きです。
毎日音楽を楽しんでいるのは、先生のおかげです。

西神中央駅のピアノを弾いておられた小学校の音楽の先生。
これからも素敵なピアノを弾き続けてください。
そして、音楽の楽しさ、素晴らしさを、たくさんの子どもたちに伝えていってほしいと願っています。
神戸には、西神中央駅も含め、18台のストリートピアノがあります。 KOBEストリートピアノ
忙しいとは思いますが、ぜひ弾きに来てくださいね。


2020年2月6日
から 久元喜造

シフ『静寂から音楽が生まれる』


大好きなピアニスト、アンドラーシュ・シフの対談とエッセイです。
訳は、岡田安樹浩氏。

とても興味深い内容で、一気に読み終えました。
シフは、ブダペストのユダヤ系一家に生まれ、肉親や友人の多くは、ナチス・ドイツによって収容所に送られました。
1953年生まれのシフは、共産主義政権下でレベルの高い音楽教育を受けます。

「偉大な作品はそれを演奏する者よりずっと偉大です」と語るシフの作曲家論は、本書の中心テーマです。
とりわけ、現代のピアノで弾くバッハの作品に対する愛情が言葉の端々からあふれ出、《ゴールドベルク変奏曲》ガイド・ツァーは、この曲を聴く際の良い手引きとなることでしょう。
シフが作品を概念的な解釈ではなく、楽器との関連で語るとき、優れたピアニストとしての経験と洞察が縦横に披露されます。
たとえば、ベートーヴェンは「オープンペダル」の指示を与えているにも関わらず、多くのピアノ教師が「ペダルは和声の変わり目ごとに踏みかえなくてはならない」と教えていることを批判し、「これはベートーヴェンの見解ではない」と言います。
ベートーヴェンは、ピアノ協奏曲第1番、《月光》《テンペスト》《ワルトシュタイン》などでは「風変わりでまったく馴染まない和音同士を一緒に響かせようとした」のだと。
スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインなどの楽器が作品と関連付けながら語られ、とても興味深い内容を含んでいます。
シフは、楽器すらもひたすら一色に塗り固めようとする音楽の「グローバル化」に抵抗を感じているように感じました。
母国ハンガリーの政治状況に対する怒りも、芸術と政治との関係を考える上で示唆に富みます。


2020年2月1日
から 久元喜造

垂水「生まれ変わる海辺のまち」②


垂水駅① へ)
垂水駅前整備のつづきです。
垂水駅北西側では、現在駐輪場となっているエリアに一般車ロータリーと立体駐輪場を整備することとし、令和5年度当初の供用開始を目指し、作業を進めます。

駅の南部では、新しい体育館を整備します。
現在の垂水体育館は垂水駅の北西方向にありますが、建設からかなり年数が経ち、老朽化が目立つとともに、面積も狭く、区民のみなさんのニーズに十分応えられているとは言えません。
そこで、駅前のレバンテ2号館にある勤労市民センターの体育室と一体化し、平磯にあるスポーツガーデンに新しい体育館を建設します。
現状よりも施設規模を大幅に拡大して施設内容も充実させるともに、木材をふんだんに使い、デザイン性にも優れたスポーツ施設にしたいと考えています。
令和4年度当初の供用開始を目指し、作業を進めます。

垂水勤労市民センターの体育室跡のスペースには、「おやこふらっとひろば」や児童館などの子育て支援拠点を整備する方向で検討を進めます。

また、垂水体育館と垂水養護学校の跡地を活用して、産科・小児救急を含めた救急医療の機能を持った総合病院の整備を推進します。令和6年度の開業を目指し、関係者との調整を進めます。

このように駅周辺において、一体的なプランにより図書館や体育館の新設が行われ、駐車場・駐輪場などもリニューアルされて駅前のイメージが一新されると、垂水駅周辺でのマンション建設などの民間投資も活発になると期待されます。
神戸市も、駅周辺の空間を活用し、今後5年間で約550戸の住宅供給を推進します。
今後の人口増も見込み、垂水小学校の校舎の建て替えなども進めます。(おわり)


2020年1月30日
から 久元喜造

垂水「生まれ変わる海辺のまち」①

垂水区は、都心への便利なアクセスを背景に、居住地として人気のある地域です。
明石海峡や淡路島を望む風光明媚な景観は、神戸にとりかけがえのない財産です。
商業施設も充実し、快適で落ち着いた住環境が整っています。

JR垂水駅は、1日あたりの平均乗降客数が神戸市内の駅では三ノ宮駅・神戸駅・元町駅・住吉駅に次いで5番目。
山陽電鉄の垂水駅ともども、神戸市西部の拠点駅となっています。

この垂水駅周辺を再整備し、利便性が高めることができれば、拠点性をさらに高め、周辺地域の活性化につなげることができます。
このような観点から、垂水駅周辺の再整備案をとりまとめました。

まず、垂水駅北東の駅前広場を再整備します。
現在、臨時駐車場があり、駅前広場は朝夕、駅方面に向かう歩行者が利用されていますが、普段の人通りはあまり多くはありません。
そこで、この場所に新しい図書館を建設することにします。
現在の図書館は、区民当たりの面積が西区に次いで2番目に狭い上に蔵書も少なく、改善が以前から求められてきました。
駅前広場に新しく建設する図書館は、面積、蔵書数を思い切って充実させます。
1階は、これまでの利用形態を勘案して駐車スペースを確保し、2階以上に、デザイン性にも優れた図書館を配置します。(上の画像のイメージ)
令和5年度当初の供用開始を目指し、スピード感を持って設計・建設に着手します。

また、垂水駅周辺は道幅も狭く、渋滞が発生している箇所もあり、自転車駐輪場も必ずしも十分ではありません。

そこで、垂水駅南西部の商大筋の道路を拡幅し、歩道と景観に配慮した駐輪場を整備します。
令和3年度当初の供用開始を目指し、作業を進めます。(つづく


2020年1月22日
から 久元喜造

西神中央「進化する上質なまち」へ②


西神中央駅① へ)
西神中央駅前の再整備は、単に、区役所、芸術・文化ホール、図書館といった個々の施設、いわば「点」の整備にとどまるものではありません。
広場、商業施設、歩道、公園など周辺エリア全体を「面」として再整備します。

駅前広場は、ときどきイベントやまつりの会場として利用されていますが、日常的に子どもからお年寄りまで多くのみなさんで賑わう空間へと、デザイン性も高めながら再整備します。
商業施設の外観と沿道もリニューアルし、くつろぎと憩いの上質な空間を造りあげます。
パークアベニューも、夜間の景観を一新し、思い切って再整備します。

新しい図書館ができ、西区民センター内にある現在の図書館が撤去された後のスペースには、市内で2か所目となる「こべっこあそびひろば」を整備します。

駅前が上質な公共空間として生まれ変われば、民間開発への機運も高まります。
西神中央駅周辺における住宅ニーズは高く、実際、昨年に駅前の市有地をマンション用地として公募した際は、多くの事業者が関心を示しました。
駅前再整備と軌を一にして、市有地などに今後5年間で、約2,000人分の集合住宅の供給を行っていきます。
駅前にマンションが供給されれば、若い世帯の入居とともに、子どもが独立した後のシニア世帯が戸建住宅から駅近のコンパクトな住戸へ移り住むことが予想されます。
そして、シニア世帯が移り住んだ後の戸建住宅には、新たな若年・子育て世帯に移り住んでもらい、持続的な住替えへとつなげていければと考えています。
さまざまな施策を組み合わせ、まちの良さを実感してもらえるようにし、西神エリアへの人口定住を図っていきます。(おわり)


2020年1月21日
から 久元喜造

西神中央「進化する上質なまち」へ①


西神中央駅 は、地下鉄・西神山手線の終着駅で、神戸の西の拠点です。
1月17日、NHK BS1の番組「駅ピアノ」に、西神中央駅に置かれたストリートピアノが、国内で初めて取り上げられました。
1台のピアノから、新しいコミュニケーションが生まれつつあることは、ありがたいことです。

さらに住み続けたい魅力的な街となるよう、西神中央駅周辺のリニューアルを進めていきたいと思います。
いま、駅の東側で進めているのは、西区区役所庁舎の建設です。
兵庫県産の木材を使い、緑あふれる開放的なデザインにします。
3階で、隣接する商業施設・立体駐車場と連絡ブリッジでつながり、「ひろばデッキ」も設けて交流の場としても活用できるようにします。
区役所サービスにはICTなどの最新技術を積極的に取り入れ、申請書類の作成は手書きではなくスマートフォンやタブレットで行うようになります。
職員の配置は、届出や申請受付から個別の相談業務にシフトさせます。

長年更地だった美賀多台の角地には、シンボリックな外観で、500席の文化・芸術ホールと新しい図書館を整備します。

西区民センター内にある今の図書館は、蔵書の数も限られ、拡充が求められてきました。
新しい図書館は、広さは4倍、蔵書も現在の3倍となる30万冊を予定しています。
個人でもグループでも利用できる多様な座席やセミナー室を設けるほか、親子の読み聞かせコーナーや「おはなしの部屋」など子育て
世代にも利用しやすい図書館にします。

周辺の歩道橋をライトアップし、ホールと一体となった上質な夜間空間を形成します。
文化・芸術ホールと図書館に隣接して、304戸のマンションが建設されます。(つづく


2020年1月19日
から 久元喜造

池内紀『ヒトラーの時代』


昨年8月30日にお亡くなりになったドイツ文学者、池内紀 さんの最後のご著書です。
池内さんは、ドイツ文学やモーツァルトの音楽を語りながら、最後までナチス・ドイツとヒトラーに並々ならぬ関心を持ち続けられました。
本書には、「ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか」という副題がつけられています。
優れた哲学、文学、音楽、絵画などドイツ文化を生み出したドイツの人々がなぜこのようなことになってしまったのかという疑問を、池内さんは最後まで抱き続けたのだと感じます。

本書では、ヒトラーが無名の扇動政治家から権力を掌握し、国民の圧倒的な支持を得て、人気を博していくまでの過程が、写真、車、マイクロフォン、ジュタリーン文字などユニークな視点も交えながら語られます。
労働者や公務員の休暇を組織化し、音楽会や映画会、スポーツ、旅行などをごく安価に斡旋しました。
ドイツ人が山以上に海に対して特有の憧憬を持っていることに注目し、バルト海や北海への船旅にも力を入れたのでした。

国民の支持と熱狂をとりつけるための工夫が次々に紹介されますが、副題の問いに対する明確な答えは示されていないように思えます。
池内さんご自身、「むすびにかえて」の中でこう述懐されます。
「ナチズムについては、・・・数限りなく論じられてきた」「にもかかわらず今にいたるまで解明がつかない」と。
その上で、「ナチズムの妖怪は異常な人間集団のひきおこしたものではなく、その母胎にあたるものは、ごくふつうの人々だった」との感想を述べられます。
本書と並行して読んだ「独ソ戦」に描かれているように、「ごくふつうの人々」が支払った代償は余りにも大きなものでした。

 


2020年1月16日
から 久元喜造

名谷「躍動する多世代共生のまち」へ。②


名谷駅①へ
名谷駅ビルの再整備に合わせ、商業施設もリニューアルします。
今年オープン40周年を迎えるパティオは、外観を美装化し、屋上広場やキッズスペースを整備するなど、若年・子育て世代にも優しい空間づくりに取り組みます。
商業施設の中心である 買い物広場 については、上のパースのようなお洒落で広やかな空間をイメージし、令和3年度までにリニューアルを進めます。

落合中央公園 は、名谷駅の北側に立地し、多くの市民のみなさんに親しまれています。
広々とした伸びやかな雰囲気が魅力ですが、中央の樹木群が眺望を阻害している面もあるので、一部を伐採し、子供さん向けの魅力ある遊具や親子で楽しめる幼児コーナーを新設します。
水辺の眺望も楽しんでいただける空間を整備します。
名谷駅から公園への動線の改良も行います。
令和5年度末ごろの完成を目指し、事業化を進めます。

ニュータウンの街づくりでは、職住近接の視点が重要です。
あおぞら幼稚園跡には、ジョブシェアセンター「神戸名谷ワークラボAOZORA」がオープンしています。
女性を中心に、仕事と育児、介護、勉強などとの両立を目指し、多様な時間帯で働くことができる、新しいタイプのオフィスです。
名谷駅前にも、子育てしながら働けるシェアオフィスを誘致していきたいと思います。

さらに、駅周辺の住宅を増やします。
市有地などを有効活用して民間投資を呼び込み、マンションなどの住宅を、今後5年間で約600戸供給できるよう作業を進めます。
これらの施策を連携させながら実施し、「名谷」が、躍動する多世代共生の街として発展していくことができるよう、全力で取り組みます。(おわり)


2020年1月15日
から 久元喜造

名谷「躍動する多世代共生のまち」へ。①


神戸市では、昭和30年代後半から「山、海へ行く」という独自の街づくりを展開しました。
山を削り、土砂をベルトコンベアと船で運搬して臨海部を埋め立て、採取跡地には良質な住宅地を造成しました。
「須磨ニュータウン」もこのようにしてできた開発団地で、白川台・北須磨・名谷・落合・横尾・高倉の6つの団地から成ります。
街びらきから半世紀以上が経過した現在、当初の世代は高齢化、その子供たちはエリア外に流出し、空き家が増加するなど徐々に街の魅力が低下してきました。
このような状況を踏まえ、「須磨ニュータウン」の中心・名谷の活性化を図るため、地下鉄・西神山手線の名谷駅周辺を再整備し、魅力のある公共空間を創出することにしました。

名谷駅から三宮駅までは、約20分。
拠点駅である名谷駅前において、商業・業務機能、文化機能、子育て環境などを充実させるとともに、駅周辺の居住機能を強化するための事業をスピード感を持って進めます。

まず、名谷駅ビルの再整備 です。
上のパースのようなイメージで、開かれた、明るい空間を目指し、リニューアルを図っていきます。
デザイン面も重視し、令和4年度までの完成を目指します。

駅前には、新しい図書館を整備します。
大丸須磨店のリニューアルにあわせ、4階フロアの一部を市立図書館として活用します。
昨年4月に北区の岡場駅前にオープンした「北神図書館」は、これまでにない斬新なデザインで注目を集めています。
新設する「名谷図書館」(仮称)も、また一味違う、洗練されたイメージの図書館を目指したいと思います。
令和2年度内の完成を目指し、大丸須磨店とよく連携しながら設計・工事を進めます。(つづく


2020年1月13日
から 久元喜造

神戸市 成人お祝いの会


きょう、ノエビアスタジアム神戸 で、令和になって初めての神戸の成人式、「神戸市成人お祝いの会」が開催されました。
今年は、震災から25年の年。
開会に先立ち、震災のときの映像が放映され、黙祷が捧げられました。
神戸の成人式は、毎年、華やかな中にも厳粛な雰囲気で行われます。
私からは、ネット時代であるからこそ、自分の眼で見、自分の耳で聴き、漂ってくる香りを嗅ぎ、手に直接伝わってくる感触を感じて、目の前の現実と向き合い、大人として生きる力を獲得してください、とお祝いの言葉を申し上げました。
6人の新成人の代表が、それぞれの想いを込めて「20歳の誓い」を述べました。

後半は、3人が同じ神戸高校の同級生、WEAVER のみなさんによるコンサートが行われ、最後は、新成人の代表6人も加わって、「しあわせ運べるように」の合唱で閉じられました。

今後の成人式のあり方ですが、民法の成人年齢が2022年4月に18歳に引き下げられることから、開催時期などが課題となってきました。
私は、以前から、現行どおり20歳になるみなさんを対象として、時期も1月のままで開催するのがよいのではないかと考えてきました。(2019年1月15日のブログ
18歳は、進学、就職の岐路に当たる大事な時期で、1月は大学受験シーズンに当たります。
そこで、2023年(令和5年)以降についても、現行どおり、その年度に20歳を迎える方を対象として、1月に開催する方針を決定しました。(神戸市ウェブサイト
法律上は、18歳で成人になるので、会の名称については、2月から3月頃にかけて若い世代のみなさんの意見を募り、検討したいと考えています。