久元 喜造ブログ

2020年8月12日
から 久元喜造

国勢調査人口の水増しは許されません。


きょうの 読売新聞 朝刊1面の見出しは、「国勢調査で不適切集計」「大阪市など人口計上に住基転用」。
前回(2015年)の国勢調査で、大阪市など一部自治体が、居住実態が不明の世帯について、国のルールに反し、住民基本台帳(住基)の情報をそのまま転用する方法で人口を計上していたと報じています。
たいへん驚きました。

市町村は、住民の住所などの情報を登録し、住民票を作成します。
ただ、他の自治体に転出しても住民票を移さない人もおり、住基情報と実際の居住実態が異なることがあります。
そこで、5年に1回行われる国勢調査では、居住の実態も含めた調査が行われます。
世帯ごとに調査票が配布され、記入していただいた調査票をもとに、全国、各自治体ごとの人口が集計されます。
神戸市は、非回答者については、近隣住民などからきちんと聞き取りを行い、国のルールに従って調査を行いました。
一部の自治体で、報道されているような方法で調査が行われたなら、その自治体の人口は水増しされたことになります。
記事で大阪市の担当者は、「人口の下振れを避けるためだった」と答えています。
今回の報道が事実であるとするなら、前回の国勢調査の信頼が揺らぎかねません。

神戸市が人口減少、大阪市、福岡市など圏域の中心都市が増加傾向にあることは、紛れもない事実です。
神戸市は、人口減少対策に全力で取り組んでいます。
同時に、国勢調査は、あらゆる政策の基本であり、調査は統一的なルールに則り、正確に実施される必要があります。
今年の国勢調査では、前回のような人口の水増しが行われることがないよう、全自治体は、良心に従い、緊張感を持って取り組む必要があります。


2020年8月8日
から 久元喜造

白川方明『中央銀行』


前日本銀行総裁、白川方明氏による 750ページ近い大著です。
私は金融の素人で、本書に出てくる用語、特に英語の意味がときどきわからず、調べながら読み進めたこともあり、通読するのにかなりの時間がかかりました。
本書中の感銘を受けた一節をブログで紹介したところ、フェイスブックに「白川氏は日本の国内景気を悪化させた張本人とされている」とのコメントをいただきました。
本書の中で著者は、総裁在任中「リフレ派」「期待派」と呼ばれる人々から厳しい批判を受け続け、これらの批判を意識しながら対応されたことが繰り返し語られます。
たとえば、2009年11月20日、政府の経済報告閣僚会議において、著者によれば唐突に「デフレ宣言」が出され、この頃から日銀は「デフレを容認している」との批判を浴び続けました。

白川氏が日銀総裁として在任された約5年間は、政権交代、リーマンショックに始まるグローバル金融危機、デフレの進行、東日本大震災とまさに激動の時代でした。
日銀総裁として何を考え、どう決断したのかが克明に描かれます。
たいへん困難な仕事だったと想像しますが、著者が常に中央銀行としての使命である「物価の安定」「金融システムの安定」を忠実に果たそうとされたことが伝わってきます。
経済理論をめぐる論争にも折に触れて言及されながら、理論的根拠に支えられた金融政策を追求し、同時に現実とのはざまで苦闘されたさまも生き生きと描かれています。
政治との関わりについても個々の政治家の実名を挙げて記されており、時代の体温が伝わってきました。
中央銀行の独立性と民主主義との関係に関する奥行きの深い考察についても感銘を覚えました。


2020年8月1日
から 久元喜造

熱中症にも最大限の注意を。


昨日の7月31日、大阪管区気象台は「近畿地方が梅雨明けしたとみられる」と発表しました。
さっそく、今日の土曜日は、神戸もたいへん暑い一日となりました。
本格的な真夏の到来に伴い心配されるのが、熱中症です。
熱中症にかかり重症になると、命の危険に関わることもあります。

とくに今年は、新型コロナウイルス感染症対策で、外出時などにはマスクを着用することが多いと思います。
たいへん難しい課題ですが、感染に注意しながら、熱中症にかからないようにする必要があります。
マスクを着けていると、熱が体から放出されにくくなり、体温が上昇する傾向が出てきます。
のどの渇きを感じにくくなり、脱水状態になる可能性が出てきます。
そこで、感染症対策が必要ではない場合には、マスクを外していただければと思います。
屋内でも屋外でも、他の人と2m以上の距離を取ることができれば、マスクを外していただきたいと思います。
子どもたちに対しては、登校時・下校時、友だちと距離を取るように注意しながら、マスクを外すように教えてほしいと思います。

熱中症患者が増加すると、新型コロナウイルス感染症への対応に支障が出るおそれがあります。
熱中症と新型コロナウイルス感染症は、重症化すると呼吸状態の悪化や意識低下が見られることがあり、症状が似ているため、医療機関では防護服を着用するなど診療に際して新型コロナ対応が必要となります。
熱中症の救急搬送が増え、入院される方が増加すると、新型コロナウイルス感染症のための病床の確保にも支障が生じる可能性が出てきます。
このような観点からも、熱中症にかからないよう、一人ひとりが注意していただきたいと思います。


2020年7月25日
から 久元喜造

北神急行の市営化を活かした街づくり


今年の6月1日、北神急行電鉄が市営化され、運賃が大幅に下がりました。(2019年3月19日のブログ
谷上から三宮までは地下鉄でわずか10分あまり。
神戸市の北部地域の価値は大きく向上していくと見込まれます。
同時に運賃引き下げの効果に期待し、手をこまねているだけでは不十分です。
市営化の効果をさらに活かし、北区の人口減少に歯止めをかけることができるような魅力ある街づくりが求められます。
とくに谷上で接続する神戸電鉄三田線沿線においては、民間投資を誘導することができるような施策が必要です。
先日、このための方策を議論するweb局長会議を開催し、各局長からはさまざまな報告や提案がなされました。
そこで、昨日、一昨日と、コロナウイルス感染者の発生状況に注意を払いながら、神戸電鉄三田線沿線を見て回りました。

谷上駅前については、すでにデジタルサイネージやベンチなどが設置され、少し雰囲気も変わってきています。
駅前広場のさらなる再整備を図ることとし、計画の策定を進めることにしています。
また、有馬街道の皆森・谷上間においては、車線の増加を含む道路拡幅工事をスピード感を持って進めます。
有馬街道の大池駅前から唐櫃大橋交差点を経て有馬口交差点までの区間では、すでに大池駅前の整備が完了し、さらにトンネルの開削も終わっており、事業が急ピッチで進められていることを確認できました。
一方、神戸電鉄三田線の花山、大池、神鉄六甲、唐櫃台、有馬口の各駅前の状況を改めて見ましたが、現状のままで良いとは思えません。
それぞれの駅前の土地の形状や利用状況を踏まえながら、神戸電鉄と協議し、必要な手立てを講じていきたいと思います。


2020年7月19日
から 久元喜造

山中俊之『外国人にささる日本史12のツボ』


神戸情報大学院大学教授、山中俊之先生の近著です。
世界96か国を回られた外交官としてのご経験を通じ、外国人が日本の歴史のどのようなところに関心を抱くのかについて語られます。
外国人は、長い年月を経て育まれてきた日本の生活文化をどう見ているのか。
この視点は、私たち日本人が自らを客観視し、独善を排しながら日本文化の特質を考える上で有益です。

最初に語られるのは、日本人なりのありようで受け継がれてきた自然との共生です。
その背後には、一神教を奉じる人々とは異なる宗教観があると、著者は指摘します。
多くの神社・仏閣は、神仏習合を基調としています。
神戸には豊かな里山があり、そこには自然と文化遺産が一体となった魅力があります。
改めて私たちは、時代の変遷を経て受け継がれてきた神戸の里山の価値を再認識したいと思います。

本書で繰り返し登場するのは、江戸時代です。
江戸時代には豊かな文化が花開きました。
著者は、葛飾北斎に1章を割いていますが、それは世界で最も有名な日本人が葛飾北斎であるという認識からです。
北斎をはじめとする浮世絵は、印象派などヨーロッパ絵画に大きな影響を与えました。
江戸時代の価値は、文化芸術にとどまりません。
江戸の街では堆肥に至るまでさまざまな資源が再利用され、「サステナブルなエコ社会だった」と著者は言います。
幕府の経済政策は意外に開明的で、庶民を含めた教育水準は高く、賄賂も少ない清潔な行政が行われていたと著者は指摘します。
時代劇の悪代官などはおそらく後世の作り物なのでしょう。
明治の近代化は画期的な意義を持ちますが、その絶対視から自由になり、江戸時代を見つめ直すことができました。


2020年7月12日
から 久元喜造

注意深く進んでいきます。


今日、7月12 日の東京都内の新規感染者数は、206人。
4日連続で200人を超えました。
東京周辺の各県でも、新規感染者が増えています。
東京23区内の感染が、周辺に広がっていることが窺えます。
大阪府でも、32人の感染者が確認されました。
神戸市内でも、昨日、そして今日と、学校での感染が確認され、対応方針を発表しました。

事態が変わりつつあると感じざるを得ません。
感染拡大への警戒を強めていく必要があります。
東京方面に仕事などで行かれるみなさんもおられると思います。
東京とその周辺での感染の広がりを考えれば、より一層の感染防止策をそれぞれ講じていただくとともに、感染者が多数確認されている場所への訪問や滞在は、慎んでいただくことが求められると思います。

PCR検査は万全ではありませんが、その限界を認識しつつ、状況に応じ、国の指針よりも幅広く、積極的に検査を行っていきます。
残念ながら、どんな人でも絶対に感染しないということはあり得ません。
大事なことは、感染のリスクを減らしていくことです。
感染の危険を最小限にするには、家に閉じこもることも選択肢ですが、それでは生活は成り立ちませんし、別の問題も生じることでしょう。
学校では、感染のリスクを最小限にしながら、子どもたちの学習の機会を確保することが必要です。
日常生活の平穏と暮らしをどう維持していくのか、難しい課題ですが、いろいろな試練を経験した神戸市民は、きっと今回の危機を乗り越えていくことができると信じます。
神戸市は、これまでのコロナへの対応について 検証報告書 を公表しました。
この検証を踏まえ、冷静に、そして注意深く進んでいきたいと思います。


2020年6月30日
から 久元喜造

「政策を自分たちがつくったという感覚」


前日銀総裁、白川方明氏の大著『中央銀行』の第23章「組織としての中央銀行」の中に、こんな一節がありました。
「多くの政策委員会のメンバーが「この政策は自分たちが作ったものという感覚」(sense of ownership)を持てるようにすることは重要である」。
日銀の政策委員会に関する言及ではありますが、組織一般に当てはまる、とても重要な指摘と感じました。

どのような組織であっても、その組織の構成員は、自分たちがやりたい仕事をしたいという思いがあるはずです。
新型コロナへの対応が求められたとき、神戸市の職員のみなさんは、次々に新しい施策を編み出し、実施に移していってくれました。(2020年6月24日のブログ)。
職員のみなさんは、まさに「自分たちが作ったものという感覚」を持って取り組んでくれたはずです。
だからこそ、説得力のある言葉で説明し、受け入れられたのだろうと思います。
上司の指示には従わなければなりませんが、指示を受けてその仕事に従事するみなさんに当事者意識に根差した感覚が欠如していれば、良い成果が挙がるわけはありません。
ましてや意味不明の仕事をやらされ続ければ、士気は下がります。

もちろん、職員のみなさんにとり気が進まなくても、大局的見地からやってもらわなければならない場合もあります。
大事なことは、それぞれの組織が目指している大きな方向が何なのかについて、目的意識を共有することだと思います。
そのような方向に沿った施策を構成員にどんどん出してもらい、それらは「自分たちが作ったものという感覚」を伴って実施に移していくことができる雰囲気をつくり上げていければと感じます。


2020年6月24日
から 久元喜造

職員参加で新規施策を発信

3月から5月にかけて神戸でも感染が拡大し、未知のウィルスとの闘いが続きました。
めまぐるしい動きに対応するため、神戸市でも数次にわたる対応方針を決定し、迅速に実施できるよう全力で取り組みました。
誰もが初めて遭遇する事態でした。
休業要請や外出自粛の中で、日常生活と経済活動へのマイナスの影響を最小限にする新しい発想が求められていました。

動いてくれたのは、中堅・若手を含む職員のみなさんでした。

市役所の中の作業に終始せず、民間事業者の方々とネットでのコミュニケーションを重ねながら、次々に新しい施策を編み出し、実施に移していったのです。

以下は、4月上旬から一月半くらいのうちに、職員のみなさんが企画してくれた新規施策の例です。

・神戸市とUber Eatsの連携による飲食店・家庭支援策「Uber Eats + KOBE」
・新型コロナウイルス対策のてくのテクノロジーを持つスタートアップを全国から募集
・地方企業向け副業・兼業プロ人材ママッチング  JOINS×神戸市
・神戸市・㈱出前館の連携による飲食店・家庭支援策「KOBE出前シフトサポート」
・神戸市とmobimaruの連携による住宅団地へのキッチンカー提供実験
・「家庭教師のトライ」と連携した生活困窮者学習支援事業(個別同時双方向型オンライン学習&バーチャル自習室)

対外的な発表も、多名部重則広報官の記者会見に、実際に企画に携わった職員が登場し、説明にあたりました。

それらの大半は、新聞、テレビなどで報道され、市民に周知されるとともに、全国にも発信されました。
これからも新規施策の企画・立案、発信に職員のみなさんに積極的に参加してもらうつもりです。


2020年6月20日
から 久元喜造

人間を大切にする街でありたい。


震災から25年、神戸の歴史を大切にしながら、この間の遅れを取り戻し、スピード感をもって、見違えるような街にしていきたいと思います。
もっと美しく、賑わいがあり、ワクワク感がある街。
同時に、それだけでは十分ではないのかもしれません。
令和の時代は、間違いなくテクノロジーが飛躍的に進化していきます。
テクノロジーの進化を街づくりや暮らしの中に取り入れるとともに、テクノロジーに支配されるのではなく、人間がテクノロジーと主体的に向き合い、人間の幸せのために活用すること。
そのためには、神戸は「人間を大切にする街」であるという想いを、私たちが強く持ち、できる限り共有することが大切だと思います。

平成の時代に出現したのが、ネットワーク社会でした。
スマホの出現と普及により、ネットワーク社会は極限にまで達しました。
そこには、光と影があるように思えます。
ネットワークにつながることにより、求める情報に瞬時にアクセスでき、見知った人、見知らぬ人とも、いつでも、どこにいてもコミュニケーションを交わすことができるようになりました。
しかし、常にスマホで誰かとつながっていることにより、大人も子どもも疲れを感じ、人間らしい生活が脅かされるようになっているという面はないでしょうか。

with コロナ時代は、対面での会話は一定の制約を受けざるを得ず、ネットでのコミュニケーションが重要度を増します。
ネット社会におけるコミュニケーションのあり方が問われます。
生き生きとした対話を楽しみ、異なる意見を尊重すること。
いつも誰かにつながっているのではなく、ときにはひとり自分と向き合い、思索するひとときも大切であるように感じます。


2020年6月15日
から 久元喜造

「with コロナ」時代をどう前向きに生きるか。


神戸市内の感染者の発生は、きょうで30日連続してゼロとなり、事態は落ち着いてきているように見えます。
市民のみなさんのご協力、多くの関係者の多大なご貢献に改めて感謝申し上げます。
しかし新型コロナウイルスが消え去るわけではなく、第2波の襲来の可能性を多くの専門家が指摘しています。
私たちは、できる限りの対策を講じ、第2波の襲来に備えなければなりません。
そして、そのような事態になったとしても、狼狽えることなく、冷静に対処し、乗り切っていかなければなりません。
はっきりしていることは、私たちは、この厄介なウイルスとともに生きていかなければならないということです。
「with コロナ」時代をどう前向きに生きるのか。

生活スタイルや経済活動を「withコロナ」時代に対応したものへと、変容させることが求められています。
神戸市の施策も変わっていかなければなりません。
そこで「神戸市withコロナ対応戦略」を策定し、感染拡大の防止と市民生活・経済活動の維持・回復の両立を目指すことにしました。

私たちは、ひとりで生きていくことはできません。
「with コロナ」時代であっても、語り合い、助け合い、そして稼いでいかければなりません。
「with コロナ」時代にふさわしいコミュニケーション、自助・共助・公助のありよう、ビジネスの姿を、神戸にふさわしいやり方でつくりあげていければと思います。
この戦略は、役所が素案をつくり、市民の意見を求めるのではなく、いただいたご意見をもとに策定することにしています。
ぜひご意見をお寄せくださいますよう、お待ちしております。 「神戸市withコロナ対応戦略」の策定に向けて