久元 喜造ブログ

2016年10月1日
から 久元喜造

地下鉄ホームなどに新しい広告が登場。

8月12日のブログ で、地下鉄ホームの広告に空きがたくさんあり、駅の雰囲気が何となく冴えない感じになっているのではないかと問題を提起し、8月20日のブログ で、改善の方向性について記しました。

その後、交通局や広報部のみなさんが精力的に作業を進め、すでに地下鉄のかなりの駅に、新しいデザインの広告が登場しています。

広告の作成に当たっては、市民や来街者のみなさんに伝えたいテーマを庁内から挙げてもらい、広報部が調整しました。
神戸市が実施している施策や事業が市民のみなさんに伝わっていないことが多く、広報手段は、ターゲットを絞り込んだ発信、SNSの活用を含め、できるだけ多種多様な方法を駆使していくことが求められます。
今回の試みも、その一環です。

キャッチコピーはできる限り簡単明瞭にし、統一したデザインにより制作しました。
それぞれのテーマの担当課室と山阪佳彦クリエイティブディレクターが、何度も打ち合わせ、最終作品に仕上げていったと聞いています。

下の写真は、三宮駅です。
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空きスペースや意味のない広告が姿を消し、ホームの雰囲気も明るくなったように感じます。
今回の新企画の広告が目立ち、今までいかに空きスペースなどが多かったかが窺えます。

下の写真は、新神戸駅です。
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名谷駅には、改札口の上にも登場です。
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広告スペースは全駅で383箇所あり、132箇所が空いていましたが、すべて埋まります。
民間事業者から広告の新規申し込みがあれば、優先度の低い市政広告を撤去し、振り替えていきます。
ささやかながら、新たな挑戦です。


2016年9月29日
から 久元喜造

神戸市役所職員採用試験私見①

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私は、職員採用試験に重大な関心を持ってきました。(職員採用試験問題試作品
現行制度では、採用試験は、人事委員会の権限になっていますので、職員を採用する側の立場から人事委員会に対し、これまでも採用試験のあり方についてお願いを申し上げてきました。

お願いの内容は、神戸市の採用試験のために特別の準備を必要としないような内容にしていただきたいということでした。
仕事に必要な文章の読解能力、社会人となる上で必要な常識、社会への関心と世の中をよくしていこうという意欲、標準的な作業遂行能力、大学などで専門分野を確実に学習した成果としてのそれらの分野における知識、国際都市神戸で仕事をする上で求められる最低限の英語能力などを有しているかどうかを、適切に判断できるような試験内容にしていただきたいということです。

今年実施された試験問題を斜め読みしましたが、おおむねお願いしているような内容になっているのではないかと感じました。
その上での個人的な感想を何回かに分けて記したいと思います。

まず、試験問題は、それぞれの分野の専門家の出題から選んでいるようですが、専門家から見れば常識かもしれない内容が、私から見れば、こんなことまで知っている必要があるのか、と首を傾げたくなるような問題も散見されました。
自治体の職員採用は、広く公募されているわけですから、採用試験問題についても、複数の異なる目でチェックされる必要があるのではないでしょうか。


2016年9月26日
から 久元喜造

身内の略語は市民にはわかりません。

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「市長への手紙」で、窓口応対に対する苦情とともに、
「窓口の職員は、 自分たちが職場内で使う専門用語(短縮語)を頻繁に口走った」
という指摘がありました。
そこで、職員全員に、
「庁内しかわからない略語は市民に使わないでください」
というタイトルでメールを送り、市民のみなさんには、わかりやすい言葉で説明していただくようお願いしました。

私自身、副市長のときや市長になり立てのとき、職員のみなさんが次々に繰り出す略語にずいぶん悩まされたものです。
最近はようやくそれらの略語もわかるようになりましたが、つい先日も、政策会議で、 「こかせん」「こかせん」という言葉が飛び交い、しばらくして、そのときのテーマから「こども家庭センターのことか」と納得しましたが、市民のみなさんに「こかせん」と言っても、何のことかわからないでしょう。

また、必要以上に長い名前を施設や事業につけ、誰もフルネームで呼ばないので、身内にしかわからない略語が庁内に流布すると、市民に対しても使い始めるという風習もやめるべきです。
名称は、簡潔明瞭、一言で言えるものにすること。
そのために、言葉を徹底的に磨くべきです。

市長は些末なことに口を出し過ぎる、と思われるかもしれませんが、職員が話す言葉の意味が市民のみなさんに正確に伝わらなければ、内容の理解にまで進みません。
このことは、市民本位の行政を進めていく上で、基本中の基本だと思います。
市役所本位ではなく、常に市民の立場に立って仕事をするという姿勢が徹底されるよう、粘り強く取り組んでいきます。


2016年9月24日
から 久元喜造

三木谷浩司+良一『競争力』

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楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏のお父上、三木谷良一氏は、経済学者でした。
本書の「はじめに」で紹介されているご経歴によれば、世界恐慌が起きた1929年、神戸市灘区に生まれ、当時の神戸経済大学、今の神戸大学経済学部を卒業後、研究者の道に進み、1972年から1993年に定年退官するまで、神戸大学経済学部教授として教鞭を執られました。
専門は、金融論とアメリカ経済論で、日本金融学界の会長もお務めになられました。
2013年11月9日にご逝去。
私は、市長に当選した直後で、就任前でしたが、ご葬儀に参列しました。

本書は、三木谷父子が「競争力」をめぐって行った徹底討論です。
イノベーション、オペレーション力、アベノミクス、ローコスト国家、国際展開力、教育力、ブランド力の各項目について議論が闘わされ、各章の最後に提言が掲載されています。

終章は「競争力とは何か」。
浩史氏は、「競争は戦争ではなく、製品の開発、価格、販売などについて相手国より経済的に優位になる」ことだと指摘し、「国というプラットフォーム」に着目されます。
「日本人だけでやろうとするのでなく、さまざまな国や人種や民族の人たちが集まってくるプラットフォームとして、日本が魅力のある国にならなければいけない」と指摘し、本書は締めくくられます。

このご指摘が神戸に一層強く当てはまることは、言うまでもありません。


2016年9月21日
から 久元喜造

行政権の長の再選禁止について

フィリピンのドゥテルテ大統領の言動に注目が集まっています。
ドゥテルテ氏が大統領に就任したのは、フィリピン憲法大統領の再選を禁止しており、アキノ前大統領が立候補できなかったことが大きな要因として挙げられます。
憲法で大統領の再選を禁止している国は、ほかに韓国、ペルーなどです。

ここで思い出されるのは、かつて総務省に設置された「首長の多選問題に関する調査研究会」での議論です。
菅義偉総務大臣(当時)の指示により設置されたこの研究会の報告書(2007年5月)は、地方自治体の長の多選制限を法律で制限することは立法政策の問題であり、必ずしも憲法には違反しないとする一方、再選を禁止することは、憲法上問題があるとの見解を示しました。

再選を禁止すると、その地方自治体の長にとって、引き続き選挙される機会が与えら れず、また、選挙人にとっても1期目の実績を評価する機会が与えられないことになります。
これは、結果として、「選挙権・被選挙権の双方について著しい制約」になると考えられました。

憲法は再選禁止について何の規定も置いていませんから、再選禁止が憲法上問題があるという考え方は、代表民主制に関する、より根本的な原理から導き出されるのと考えられ、理論的には普遍的な妥当性を持ちます。
一方、各国の制度は、一般理論のみでなく、それぞれの苦難に満ちた民主主義確立の歴史を経て出来上がっていることにも留意する必要があります。
このように、行政権の長の再選禁止については、多角的に考察する必要がありそうです。


2016年9月16日
から 久元喜造

豊能郡ダイオキシン問題の顛末

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豊能郡ダイオキシン問題は、すでに記憶の彼方に退いていましたが、9月15日の読売新聞夕刊に記事が掲載されていましたので、顛末について少し所感を記したいと思います。

一報を受けたときは、怒りで身体が震えました。
豊能郡環境施設組合は、地方公共団体です。
ダイオキシンを含んだ廃棄物を、無断でほかの区域の最終処分場に埋め立てるなどあり得ないことです。
しかし、感情的になって軽挙妄動すれば、いたずらに混乱を招きかねず、冷静な対応を心がけました。
とにかく一刻も早く撤去させることを最優先にし、市民のみなさんに正確な情報を伝えることを心がけました。
広瀬朋義環境局長をはじめ環境局幹部のみなさんは、同組合に対して毅然と対応するとともに、先方にも出向き、全力で取り組んでくれました。
しかし豊能郡環境施設組合の対応は、極めて無責任で、合意した撤去期限は延長せざるを得ませんでした。
その後、大阪府の介在もあり、再度延長した8月31日に撤去を完了できました。

9月11日・12日には、G7神戸保健大臣会合の開催が確定しており、この問題が未解決であれば、神戸のイメージダウンにもつながりかねませんでした。
8月31日までの問題解決は至上命題でしたので、撤去完了の報告を受けたときは、ほっと胸をなでおろしました。

一連の経過の中で、神戸市民の対応は冷静でした。
処分場周辺の住民のみなさんには、環境局が住民説明会を開いて説明し、環境への影響など不安の声も出されましたが、大きな混乱はありませんでした。
神戸の成熟した市民性を改めて感じました。


2016年9月13日
から 久元喜造

G7神戸保健大臣会合

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9月11日(日)、12日(月)に開催された、G7神戸保健大臣会合が閉幕しました。
G7(日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス)及びEU、アウトリーチ国(シンガポール、タイ、ミャンマー、ラオス)、OECD(経済協力開発機構)、OCHA(国連人道問題調整事務所)、 世界銀行、WHO(世界保健機関)、WPRO(WHO西太平洋地域事務局)の各国際機関、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)、ビル&メリンダゲイツ財団などの民間団体などが参加しました。

「神戸宣言」では、以下の項目に言及がなされました。
・公衆衛生危機に対する国際保健の枠組み
・ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成及び高齢化に焦点を当てた生涯を通じた健康増進
・薬剤耐性
・研究開発とイノベーション

私は、各国大臣をはじめ参加者各位に、神戸医療産業都市に関するプレゼンを行いました。
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その後、スーパーコンピューター京、メディカロイドを視察をいただくなど、この機会を通じて神戸の取り組みを発信することができました。
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神戸市としては、今回の保健大臣会合での議論と「神戸宣言」を踏まえ、認知症にやさしいまちづくりの推進、ITを活用した感染症管理体制の強化など、一層の健康都市づくりを進めていきます。


2016年9月12日
から 久元喜造

朝日新聞「神戸市の会計操作 問題点は?」

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9月11日の朝日新聞朝刊は、神戸市が行っている「オーバーナイト(一夜貸し)」を報じています。
「市から借金をしている法人は年度末に金融機関からお金を借り、いったん市に全額を返済。翌年度には市は再び法人に資金を貸し、それをもとに法人が銀行に返済」するやり方です。
この記事が指摘するとおり、問題があります。
このやり方をとれば、神戸市の負債の残高が減ることになり、見かけ上の財政指標がよく見えるからです。

この手法をとったのは、小学校は大規模校が国の補助対象外で、市立高校建設は元々市の単独事業であることから、厳しい財政状況の中で必要な学校建設に対して単年度での財源手当てが難しく、財政負担を平準化することが背景にあったようです。

私は、市長就任直後、この神戸市独自の財源調達手法は、これまでの経緯があるとは言え、財政規律上の問題があると指摘し、新規の学校建設は、神戸市が直接、市債を起こす方法に変更しました。
しかし、すでに建設された学校については、新たな資金の調達が必要になることから計画的に解消することにしました。

私は、将来世代へのつけ回しは持続可能ではないと考え(2015年11月13日のブログ)、事務事業の見直しなどに積極的に取り組んできたので、将来世代に負担を押しつけている自治体の代表選手として神戸市が取り上げられたことは、残念でなりません。
しかし「会計操作」の実態は事実なので、批判は批判として甘受いたします。

記事の指摘を率直に受け止め、ほかの「会計操作」についても、できるだけ早く解消したいと思います。


2016年9月9日
から 久元喜造

教員アンケート – 先生の悲鳴が聞こえる。

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会議、行事、来客、事務説明などの合間を縫い、小中学校などの先生方から寄せられたアンケートを読んでいます。
学校現場の多忙化について、匿名を含め、1403件の回答が寄せられました。
すべてに目を通します。

「早朝から深夜まで働きづめ」
「子供たちに向き合う時間がとれない」
「昼食もまともにとれない」
「土日もほとんどない」
学校現場の過酷な実態が浮かび上がります。

どうすればよいのか。
圧倒的に多いのは、「教員の数を増やす」、次に「教員の給与を上げる」が続きます。
神戸市だけで実現するには困難が伴いますが、やれることから取り組みたいと思います。
たとえば、教頭先生の給与の引き上げは、市会とも相談し、来年4月からの実施を目指します。

多忙化をもたらしている原因についても、具体的に記されていました。
・教育委員会からの膨大な照会、調査への回答
・保護者からの過大な要求とトラブル
・徴収金への対応などの会計事務
・研修への度重なる参加
・使い勝手が悪い情報処理システム
・夜遅くまで学校にかかってくる電話
・校外から持ち込まれる子どもたちへの膨大な配布物
(市長部局からのものはなくなったはずですが・・・2月25日のブログ
・KEMSの審査
・部活指導の負担(ただし、大きく意見が分かれていました)

これらの多忙化要因をひとつずつ洗い出し、具体的な解決方策をたてることが求められます。

「市長の思い付きで(アンケート担当の)〇〇さん、〇〇さんがとても気の毒」という回答もありましたが、冷笑したり、皮肉を言っていても何も前に進みません。
まずは総合教育会議でしっかり議論を行い、方向性を見出していくことにします。


2016年9月6日
から 久元喜造

宮崎市長と市役所モンロー主義

故吉本泰男氏は、『航跡遥かなり』(8月16日のブログ)の序文で、宮崎辰雄市長(写真)のことを「市長歴20年の名市長」と称えつつ、「生え抜き人事を堅守」した人事政策を「市役所モンロー主義」と批判されました。
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吉本氏は、結局は「市役所職員から出た市長を頂点に、ピラミッド式の団塊で固めた市役所第一主義が台頭」し、「仲間だけの棚づくり」になったと指摘しておられます。

当の宮崎市長が市役所の人材育成について、「神戸を創る」(8月26日のブログ)の中で強調しておられたのが、外郭団体の活用です。
係長試験に合格したばかりの若手を外部団体に優先して送り出したのです。
その目的は、「職員に役所でできない企業経営を習得し、経営センスを磨かせ・・・役人根性を捨てさせる」ことでした。
「2,3年の期間で、出先の成績次第でいいポストに返すので、目の色が違う。現に、助役や局長の大半は、外郭団体出向職員の経験者で占められている」と記しておられます。

宮崎市長の都市経営は、このように積極果敢でした。
職員を減らし、市民サービスを縮小するような短絡減量経営は、本来の市民福祉という基本視点を見失う」とも書いておられます。

残念ながら震災後、財政危機に陥った神戸市は、宮崎市長が忌避された手法で財政再建を余儀なくされました。
これは避けられない道でした。
そしてこの取り組みが成果を上げ、財政の健全性がある程度回復した今、かつての手法とは異なる、積極果敢な経営手法が求められています。
民間人材を登用し、プロパー職員と一体となった「最強の仕事人チーム」をつくることもその一つです。