久元 喜造ブログ

神戸市役所職員採用試験私見③

161026-1
試験区分「法律」の試験問題を見てみました。
憲法が5問、政治・法律が1問、行政法が12問、民法が12問の計30問です。
私の印象ですが、出題が行政法に偏りすぎているように感じます。
地方自治体は幅広い仕事をしており、法律を修めた職員は、法律に関するバランスのとれた知識を活用し、リーガルマインドを発揮していくことが求められます。
そういう観点から言えば、刑法、民事訴訟法、労働法の初歩的な問題が全くなくてもよいのか、疑問です。
また、「政治・法律」というカテゴリーが設けられ、国会議員の地位と権能に関する質問が1問だけありましたが、法学部の授業やゼミでは政治学は重要な位置を占めており、政治学・行政学の分野から数問の出題があってもいいのではないかと感じます。

問題の内容を見ると、民法は、常識的な出題で考え方の基礎を問う良問が多いと思いましたが、全体の半分以上を占める憲法、行政法では、マニアックで難しすぎる出題が散見されました。
たとえば、住民訴訟に関する問題を読むと、外国人の訴訟提起の可否、損害賠償を求める訴訟における職員の被告適格、財務行為に先行する行政処分の取り扱いなど住民訴訟制度の内容に踏み込んだ内容でしたが、この問題に正しく答えられる市役所職員は何パーセントくらいいるのでしょう。
法学部の学生であれば、住民訴訟の存在と性格を知っていれば十分で、こんな制度の各論は、市役所の法務・財務部門に配属されてから勉強するような内容ではないかと感じました。