久元 喜造ブログ

2018年9月13日
から 久元喜造

神戸空港の運用時間の緊急拡大

9月4日の台風により、関西国際空港が被害を受け、6日、大阪府の松井一郎知事より、関空の全面復旧までの間、神戸空港が代替機能の一部を担ってほしい、との要請を受けました。
さらに、10日、国土交通省航空局長より、関空の本格運用までの間に限り、関空の国際拠点空港機能の代替のための緊急措置として、神戸空港の運用を拡大する必要があるので、協力をお願いしたい旨の依頼がありました。
昨日の12日、私は、この依頼について、その趣旨を理解し、協力すること、また松井大阪府知事より要請のあった運用時間の前後1時間の拡大について、対応する用意があることを回答しました。

これらの経緯を踏まえ、本日、国土交通省から、神戸空港における国際線・国内線の代替受け入れについて、次のような発表がありました。
・現行の運用時間は、7時から22時までとなっているが、これを、6時から23時までに拡大する。
・一日あたりの発着回数(最大)を、現行の60回から90回に拡大する。
・国際線を含む運用とする。

今回の決定を実施するためには、国際線を受け入れるためのCIQ(税関、出入国管理、検疫)の体制整備、航空管制の充実などが求められ、国に対して適切な対応をお願いしているところです。
同時に、神戸市としても、三宮などへのアクセスの強化など必要な対応を行っていきます。

関空の被災による関西経済の影響を最小限に食い止めるためには、関西の各地域が一致協力して対応していく必要があります。
神戸市としては、今回の国の決定を受け、関空の代替機能をしっかりと果たしていけるよう、全力で取り組んでいきます。


2018年9月11日
から 久元喜造

「鵯越合葬墓」に応募が殺到。


神戸で初めての合葬式墓地「鵯越合葬墓」が、7月18日に完成し、開所式が行われました。(2018年7月21日のブログ
7月19日から8月20日まで申し込みを受け付けたところ、神戸新聞、読売新聞などに報じられているとおり、予想を大幅に上回る申し込みがありました。

合葬墓は、個別安置施設と合葬施設から構成されます。
個別安置施設の骨壺に10年間安置されたご遺骨は、その後、合葬施設に埋葬されます。
今回の募集では、個別安置施設については、160体の募集に対し、651体の申し込みが、また、合葬施設については、400体の募集に対し、2518体の申し込みがありました。
560体の募集に対し、3169体の申し込みがあったことになります。
申し込み資格のある方については、すべて合葬墓の使用許可を行う予定です。
開所式の後に行われた内覧会にも、たくさんのみなさんが来られ、関心が高いことは承知していましたが、やはり実際の申し込みも想定を大幅に上回りました。
また、申込者の約8割は、生前申し込みの方々でした。

お墓に対する意識が確実に変化していることを改めて認識しました。
このことは、記名板を希望されたのが1500体と、全体の半分以下にとどまったことにも現れているように感じます。
個別安置施設(1600体収蔵可能)、合葬施設(1万体収蔵可能)とも、十分な施設規模を備えていますので、すぐに合葬式墓地を増やす必要はありませんが、今後の墓地行政は、近年における意識の変化に対応したものでなければならないと感じています。

次回の「鵯越合葬墓」の募集は、来年4月頃の予定です。


2018年9月9日
から 久元喜造

中條聖子『森のかんづめ』


本当に申し訳ないのですが、どなたからいただいたのか忘れてしまいました。
部屋の本棚にあるのをたまたま見つけ、昼休みに読みました。

表紙が可愛くて美しい、素敵な絵本です。
日本語と英語の両方で書かれています。

ある山のちょうじょうに 美しい森にかこまれた 小さな国がありました。
小さな国には ひとりの王さまと 少しの人びとが すんでいました。
人びとは すくない畑をたがやして みんなしっそに なかよく くらしていました。

ある日、小さな国の王さまは、大きな国の王さまからパーティーに招かれます。

見たこともない大きなたてもの、そして大きなお城がそびえています。
お城の大広間では、たくさんの王さまや女王さまたちがにぎやかに話をしていましたが、小さな国の王さまは話の輪に入れず、すみのほうで、ぽつんとたっていました。
そしてすばらしいたべものがつぎつぎにはこばれてきます。

しかし、大きな国の王さまから見せられた地図には、小さな国はのっていませんでした。

国に帰った王さまは元気がありません。
そんな王さまを人びとは励まします。

王さま 元気をだしてください。
わたしたちの国をしってもらうためにも じまんのものを いっしょにかんがえましょう。

小さな国の人々が、自分たちの国のすばらしさを知ってもらうために考え出したものとは・・・・・・?

作者の中條聖子さんは、神戸出身の内科医。
神戸大学医学部附属病院で診療と研究に当たっておられましたが、阪神・淡路大震災で亡くなられました。
29歳の若さでした。
中條さんのやさしいお人柄が偲ばれる佳作です。
美しく、ほのぼのとした絵は、三浦美代子さんの作品です。


2018年9月6日
から 久元喜造

障害者雇用に関する神戸市の対応


ここのところ、霞が関の府省における「障害者雇用水増し不正問題」が、連日大きく報道され、批判が集まっています。
地方自治体でも、同様の不正が行われているという指摘もあります。

このような報道に接するみなさんは、役所はみんな障害者雇用の水増しを行っている、信用できないと思われることでしょう。
とても悲しいことです。
しかし、決してそうではありません。
多くの自治体は、障害者雇用数を正確に把握し、所管行政機関に報告しています。
神戸市もそうです。

神戸市では、まず職員に対し、手帳の種類、障害名、障害の等級、有効期限を申告してもらっています。
この調査の回答は、職員の意向を尊重する見地から、任意としています。
その上で、障害者雇用率の算定の対象となる職員について、所得税・住民税の障害者控除の対象となるかどうかを確認しています。
人事当局がこの方法で把握している障害者職員であっても、本人から申告がない場合は、障害者雇用率の対象者には含めていません。
この結果、神戸市の障害者雇用率は、実態よりもむしろ低い数値となっています。

報道を見る限り、中央府省の対応に問題があることは間違いありませんが、障害者雇用率に関する明確な基準を示さず、ただ、見かけの数字の達成率ばかりを問題にしてきた厚生労働省のお役所仕事も厳しく問い直されなければなりません。

大事なことは、どんなときでも、行政は、内部でも外部に対しても、嘘をつかないという当たり前のことができるかどうかです。
このことは、神戸市のどのような行政分野についても当てはまります。
嘘はつかないまでも、都合の悪いことは覆い隠すという風習は正す必要があります。


2018年9月3日
から 久元喜造

開かれた市役所になっただろうか?


2013年6月7日、私は秋に予定されていた市長選挙への立候補を表明し、政策を発表しました。
柱の一つが「本物の市政改革」でした。
街頭では、とくに、開かれた市役所にすることをお約束しました。
「窓を大きく開け放ち、外の空気を市役所に取り入れ、生き生きとした職場を創り上げていきます」と申し上げました。

あれから5年余りの歳月が流れ、私の任期は2期目に入りました。
「開かれた市役所」は実現したでしょうか。
確かに、ICT、公聴、国際交流、デザインなどさまざまな分野で民間人材を登用し、兵庫県との人事交流もスタートさせ、民間企業への研修派遣も軌道に乗りました。
しかし、職員のみなさんの意識がまったく変わっていないとすれば、「本物の市政改革」など望むべくもありません。

幸い、職員の中には、進んで街に出て、民間企業、学界、市民のみなさんと積極的に意見交換し、新しい分野の施策に果敢にチャレンジする動きが出てきています。
その一方で、ひたすら役所の中に閉じこもり、市役所コミュニティの中の平安を守ることにのみ汲々とする空気がいまなお支配的であるならば、とても残念です。
世間の常識が通用しない閉鎖的な体質が温存されているならば、それはとても悲しいことです。

私は、市役所職員としての経験がなく、職場の生の雰囲気を皮膚感覚として感じることができていません。
もし、現状に疑問を感じるみなさんがいるのであれば、どのようにして現状を打破していくのかについて、開かれた形で堂々と議論を行い、改革の方向性を提言してほしいと願います。
もちろん、トップとしての私の責任が大きいことは言うまでもありません。

 


2018年9月1日
から 久元喜造

筒井清忠『戦前日本のポピュリズム』


筆者は、ポピュリズムを「大衆の人気に基づく政治」と定義づけ、ポピュリズムは戦前から存在した、と主張します。
まず詳しく触れられるのが、日露戦争の講和に反対した日比谷焼き打ち事件です。
1905年8月、日比谷公会堂で開催された「国民大会」に集まった群衆は、講和に賛成の論陣を張っていた国民新聞社、内務大臣公邸を襲撃、東京市内の派出所の約7割が焼失したのでした。

大正に入ると、米騒動などの「民衆騒擾」が繰り返される一方、普通選挙要求運動が広がり、「対中強硬政策運動」、米国の「排日移民法排撃運動」などが展開されていきました。
1925年、護憲三派の加藤高明内閣により「普通平等選挙法」が成立、日本は政党政治の時代に入っていくのですが、翌年1月に成立した第1次若槻礼次郎内閣では「松島遊郭事件」「陸軍機密費事件」といったスキャンダルが立て続けに起き、マスメディアはその始終を詳しく報じました。
当時は現在の週刊誌や大衆紙はほとんど存在せず、新聞がスキャンダル報道の役割を担っていました。
関東大震災後に起きた「朴烈怪写真事件」報道の一部始終も、たいへん興味深いものでした。

不毛な政争に明け暮れる政党は国民に愛想をつかされ、マスメディアは「清新な」軍部、革新官僚、そして「天皇親政」に期待を寄せ、満州事変、国際連盟脱退、日中戦争を支持する論陣を張っていきます。
戦前日本のポピュリズムは、近衛文麿内閣のときにクライマックスを迎え、日本は破局へと突き進んでいったのでした。
筆者の歴史観がストンと落ちたわけではありませんが、マスメディアの論調をはじめ新しい発見がたくさんありました。


2018年8月27日
から 久元喜造

海外派遣職員には十分な研修を。


神戸市は、1985年から天津市に事務所を置いています。
所長は代々神戸市の職員が就いています。
今回の出張(2018年8月9日のブログ)では、天津事務所長の内示が発令の約一月前に行われることを知りました。
今の天津事務所長から聞いたわけではなく、出張中にみんなで雑談している中で話題になり、わかりました。

神戸市天津事務所の職員は、所長と副所長のわずか2人です。
大所帯なら、トップの所長は中国語があまりできなくても、中国人スタッフを含めた職員を駆使して仕事をすることもできるでしょう。
2人しかいないなら、所長も単にマネジメントをしているだけでは仕事にならず、各方面に自ら出向き、人脈をつくり、個別案件について交渉することが求められるはずです。
中国語を理解し、自ら話すことが必要です。
いかに優秀な職員を任命しても、わずか1か月で現地の事情を知り、中国語を聞き、話すようになることは極めて困難だと思われます。
多くは初めての海外勤務でしょうから、海外赴任の準備、さまざまな手続き、前任者からの引継ぎを短期間に行わなければならないでしょう。

帰国して、人事当局に改善をお願いしたところ、天津に限らず、海外の事務所長などに発令するときは、原則庁内公募とし、1年前に内示することになりました。
1年あれば、赴任地の事情や現地の言葉を勉強する時間を十分に持つことができるはずです。
人事当局は、対象者が現地の言葉をしっかりと学ぶことができるよう、事前研修を充実させる意向です。
語学力の修得を含め、しっかりと準備し、海外の任地で思う存分能力を発揮してほしいと願っています。


2018年8月25日
から 久元喜造

東京の余剰財源は地方に配分を。


少し前のことになりますが、8月18日の日経新聞に、「地域間の税収格差 どう是正」との見出しで、「国」と「都」が再配分を巡り火花を散らしている、という記事が掲載されていました。
記事によれば、政府・与党は、2019年度から地域間の税収格差を縮めるため新たな措置を導入する方針ですが、これに東京都が反論しているというのです。
焦点になっているのは、合計6兆円あまりの法人2税(法人住民税・法人事業税)です。
人口一人当たりの税収額は、都道府県間で最大6倍以上の開きがあり、その是正が問題になっています。

このような格差が生じる背景は、都区財政調整制度の存在です。
東京に集中する税源を東京都と23区で山分けする仕組みになっていて、膨大な財源余剰が生じています。
この結果、財政状況を見ると、同じ大都市でも23区と20の指定都市との間で大きな格差が生じています。(2015年7月22日のブログ
直近の統計(平成28年度決算)では、この格差がさらに拡大しています。

指定都市の市民一人当たりの借金 65万8000円
東京都特別区の区民一人当たりの借金 5万5300円

指定都市の市民一人あたりの貯金 3万6400円
東京都特別区の区民一人あたりの貯金 18万7600円

つまり、23区は、指定都市に比べて、人口一人当たり、5倍以上の貯金があるのに、借金は約12分の1しかないということです。
政府・与党におかれては、これ以上の東京一極集中を食い止める見地からも、ぜひ思い切った偏在是正のための措置を講じていただき、税源配分の不公正を正していただくよう期待しております。


2018年8月22日
から 久元喜造

再び、打ち水について


台風が近づいていますが、きょうも朝から炎暑ですね。
異常高温対策として、市民のみなさんに「打ち水」のお願いをしています。(2018年7月26日のブログ)。
上の写真は、灘区役所の玄関です。
区役所などに幟を立て、打ち水の呼びかけを行っています。

水は気化するとき、周囲から熱を奪います。
街のあちこちで水が撒かれれば、間違いなく気温が下がるはずです。
私が子供の頃、路地裏などでよく打ち水が行われていました。
いつしか打ち水の風習が廃れてしまったことは、残念なことです。
ご近所で声を掛け合いながら打ち水をすることは、とても良いことなのではないでしょうか。

中央消防署では、風呂の残り湯で前の道路に放水しています。
風呂の残り湯などで打ち水することは、節水や水の有効利用の意味もあります。
ただ、今年のような異常な炎暑の年には、水道水を使った打ち水も行っていただきたいと思います。
水道代が気になるところですが、1カ月当たりの水道使用量の分布を見ますと、神戸市では、基本料金の中でおさまっている世帯が42%です。
基本料金の範囲内に収まっていると、打ち水などでもう少し水を使っても水道料金は増えません。
もちろん、たくさん使うと水道料金はそれだけかかることになりますが、異常高温の日には、少しでも街を涼しくしていくことが必要で、そのためのコストとお考えいただけないかと思います。


消防局では、水を使ったイベントで、街を涼しく感じていただく試みを行っています。
上は、新長田の鉄人広場、下は、森林植物園でのイベントです。

水を賢く使って、猛暑を乗り切りたいものです。


2018年8月19日
から 久元喜造

砂原庸介『新築はお好きですか』


諸外国と比較しても特異な日本の「持家社会」がどのよう形成されてきたのか、「持家社会」を生み出してきた「制度」について考察されています。
政府の政策展開のほか、経済の成長段階、社会慣習、地方政治など幅広い側面からの分析は、極めて鋭く、興味深いものがありました。
持家を供給するため、都市は「ヨコ」に広がり、さらに集合住宅の建設により「タテ」に伸びていったのでした。

しかしいま「持家社会」は、大きな壁にぶつかっています。
その象徴が膨大な空き家の発生です。
現在、空き家は一戸建ての住宅が中心ですが、今後、分譲マンションにも広がっていく可能性があります。
分譲マンションの区分所有者の高齢化が進むとともに、永住志向が強くなっており、自分の世代さえ利用できれば良いと考える区分所有者が増えれば、共有部分の新規投資も進まず、資産価値は下落していきます。
中古住宅として転売される可能性も低下し、「櫛の歯が欠けるように」空室が増えていくのです。

筆者は、タワーマンションにも警鐘を鳴らします。
「仮にその一部が将来管理運営に行き詰まり、「負の遺産」となった場合には処理が極めて困難になると考えられる」からです。
そして、「将来にわたって維持管理のあり方が懸念されている超高層のタワーマンションについては、政府はそのガバナンスに関心を持つ必要がある」と指摘されています。
まったく同感です。

膨大な住宅ストックを抱える現状において、中古市場、規模の大きな賃貸住宅に関する取引費用を下げる努力が求められるという指摘もそのとおりですが、具体的な政策をどう用意するのかは、頭が痛いところです。