久元 喜造ブログ

2015年3月2日
から 久元喜造

祝・ラグビーワールドカップ神戸開催決定

つい先ほど、うれしいニュースが入ってきました。
アイルランドのダブリンで開催されていた、ラグビーワールドカップの運営団体RWCL(ラグビーワールドカップリミテッド)の理事会で、神戸を含む12都市が、2019年に開催されるラグビーワールドカップ開催都市に選ばれました。

これまで、兵庫県、神戸経済界など神戸全体でスクラムを組み、誘致活動を行ってきました。
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三宮や元町の商店街、百貨店をはじめ、たくさんのみなさんの応援をいただき、横断幕をつくり、市民、県民の皆さんに呼びかけてきました。「ぜひ神戸で開催したい」と願う多くの方々の強い思いが、実を結んだものと考えています。
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神戸は、2002年サッカーワールドカップを開催した球技専用のスタジアムがあり、大規模スポーツイベントの経験が豊富です。
また、ラグビートップリーグ「神戸製鋼コベルコスティーラーズ」のホームタウンで、多くの市民がラグビーを楽しんでいます。
昨年11月のラグビー日本代表対マオリ・オールブラックス(ニュージーランド)の国際親善試合は、私もノエビアスタジアム神戸に応援に行きましたが、21,234人と、日本代表戦で最多観客数を記録しました。

世界最高峰のプレーを神戸で観戦できることが、今から楽しみです。


2015年2月27日
から 久元喜造

幻の神戸市公会堂

少し前の読売新聞に、牧原出東大教授の書評が掲載されていました。
取り上げられているのは、 新藤浩伸『公会堂と民衆の近代』 (東京大学出版会)。
「日比谷公会堂に代表される、全国の都市「公会堂」への本格的研究書」です。

神戸には、日比谷公会堂に匹敵するような公会堂はありませんが、戦前には、少なくとも二度、建設が構想されたことがありました。
神戸が国際港湾都市として急速に成長を遂げ、財力も蓄えられた1921年、神戸市会は、公会堂建設議案を決定。
大倉山に、1800人以上収容できる大集会室や、600人規模の大食堂、レセプションホールを備えた公会堂を建設する計画を立て、コンペを実施しました。
下の写真は、1等に輝いた作品です。
堂々たる威容を誇っていますが、1923年に関東大震災が発生。構想は日の目を見ませんでした。
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昭和に入ると、六大都市で公会堂がないのは神戸市だけということになり、再び公会堂の建設計画が浮上します。
やはり大倉山での建設を想定し、設計図を公募しますが、戦時色が濃くなり、計画は断念を余儀なくされました。

日比谷公会堂をはじめ各都市の公会堂では、政治集会にとどまらず、文化講演や娯楽演目も提供されました。
時局関係の催事では人々が集まらないので、政治公演とあわせて、漫談や映画などの娯楽が加えられたようです。
牧原教授は、「公会堂の持つ教育的機能と、集い・楽しみを求める人々の欲求との間には「ずれ」があった。国策としたかかな庶民がせめぎあう舞台装置。強靭な市民社会はそこから生まれるのだろうか」と、希望の光を見ておられます。
本格的な公会堂を持つことがなかった神戸市でも、似たような「せめぎあい」はあったことでしょう。
「せめぎあい」の舞台装置が、別の形でどのように存在したのか、興味が持たれます。


2015年2月21日
から 久元喜造

職員採用試験問題・試作品

国も自治体も、職員採用試験をどのように行うのかは、たいへん重要です。
近年は、筆記試験や面接のほかに、グループ討議なども行われ、特別枠も設けられるなど、試験方法にも多様化が見られますが、それでも筆記試験のウェイトは小さくはありません。

私は、筆記試験については、次のような能力や資質を確認するような内容であることが大切ではないかと考えています。

まず、自治体や国では文書で仕事の方針や内容が示されることが多く、文書を読んで正しく理解する能力が不可欠です。
また、試験区分に応じて、事務系の場合には、法律学、経済学、経営学、政治学などの専門領域において基礎的な知識を持っているか、誠実に勉強してきたかどうかを見る必要があります。
そして、公務員の場合には、とくに、社会の動き、時事問題に関心を持っていることが求められると思います。政府や与党と同じ考え方でなくてもよいから、社会を変えていこうという意欲を持っていてほしいと思います。
さらに、とくに国際都市・神戸市の職員には、英語の基礎的な読解力を持っていることも必要です。

このような問題意識で、これまでの出題を見ると、個別分野の専門家が作成した問題を寄せ集めたようなところがあり、上記の観点からの能力・資質を確認する上からは、改善が求められるように感じてきました。
そこで、よりトータルな視点に立った採用問題の試作品をつくってみましたので、ご笑覧いただければ幸いです。

職員採用試験問題試作品(2015年2月作成)

これは、同じ問題意識を共有する長年の友人に原案をつくってもらい、私が手を加えたものです。
職員採用試験に関わり、あるいは、関心を持っておられるみなさんにとり、何かの参考になれば幸いです。


2015年2月18日
から 久元喜造

「厳しい」の連発ではなく・・・

会議などで挨拶するとき、事前に、庁内の各局が原稿をつくってくれます。
ありがたいことですが、ふだんから少し気になっていることがあります。

それは、ほとんどの原稿に、「○○を取り巻く状況は誠に厳しく」とか、「昨今の○○情勢には誠に厳しいものがありますが」とか、とにかく「厳しい」ことが強調されていることです。
もしも、私が原稿のとおり話していたら、あっちでも「厳しい」、こっちでも「厳しい」と触れ回ることになります。
副市長、局長など幹部のみなさんが、もしも原稿にあるように、厳しい、厳しい、と言っているとしたら、市役所全体として、市民に対して、ずいぶん元気が出ないメッセージを発し続けていることになっているのではないでしょうか。

行政に携わる者には、根拠のない楽観論を戒め、状況を冷静に見極めることが求められます。
しかし、このことは、あちこちで「厳しい」を連発することで果たされるものではないはずです。
それぞれの分野において生起している事象を客観的に観察し、その事象の背後にある要因を冷静に分析することが大事ではないかと思います。

たとえば、人口減少時代における将来の都市像をつくる前提として、人口トレンドの要因を分析するため、有識者会議を設置して議論を進めてきましたが、たいへん有意義な分析結果が提示されています。

また、昨年暮れには、神戸市の小中学生の学力の現状について、雪村新之助教育長をはじめ教育委員会幹部のみなさんから説明を受けましたが、実証的な分析を含むたいへん説得力がある内容でした。

市役所のみなさんには、行政のプロの目で冷徹に現実を見つめ、その背後のある課題を摘出し、実効性のある政策の選択肢を提示していただくことを期待しています。

 


2015年2月15日
から 久元喜造

『カスバの女』 ― 私の好きな曲⑧ 

アルジェリアの首都アルジェ。
入り組んだ路地-カスバの酒場が舞台です。

昨晩、同窓会で、カスバに行ったことがある旧友の話を聞き、改めて、この歌を想い出しました。

1950年代から60年代にかけて、アルジェリアは、壮絶な独立戦争のまっただ中にありました。
この時代を舞台に、フランス軍に雇われた傭兵と、パリから流れてきた「酒場の女」の、つかの間の恋情が歌われています。

女は、いろいろな事情があって、植民地アルジェリアに行き着いたのでしょう。
華やかだったパリでの昔話を、傭兵に語ります。

 セーヌのたそがれ 瞼の都
 花はマロニエ シャンゼリゼ
 赤い風車の 踊り子の
 いまさらかえらぬ 身の上を

しかし、傭兵も、「酒場の女」も、所詮は「買われた命」。
「恋してみたとて 一夜の花火」です。
傭兵は、もう次の日には、アルジェを出て行き、次の戦場へと向かいます。

 明日はチェニスか モロッコか
 泣いて手をふる うしろ影
 外人部隊の 白い服

『カスバの女』がつくられたのは、1955年のようですが、ヒットしたのは、10年以上経った1967年だそうで、 私がこの曲を知ったのは、その後のことだったと思います。
なぜか忘れがたい曲になっているのは、この歌の謎めいた雰囲気が子供心にも印象的だったのと、小学生の頃、よくテレビでアルジェリアの動乱が報じられていたせいかもしれません。
アルジェリアは、1962年に独立してからも、混乱が続いたようです。ベンヘッダとか、ベンベラといった政治家の名前が繰り返し出ていたように記憶しています。


2015年2月11日
から 久元喜造

皇后陛下「本とふ文の林ありて」

少し前のことになりますが、1月14日に「歌会始の儀」が皇居で行われました。
今年のお題は、「本」。
美智子皇后は、次のように読まれました。

来(こ)し方(かた)に本とふ文(ふみ)の林ありてその下陰に幾度(いくど)いこひし

本を文の林に喩えられ、幾度となく本で憩われた想いが表現されています。
美智子皇后が少女時代から本を友として成長されたことは、知られています。

想い起こすのは、1998年、NHK教育テレビで放映されたご講演です。インドで開催された会議に寄せられたビデオによる講演で、英語で行われました。
タイトルは、「子供の本を通しての平和-子供時代の読書の思い出-」。
美智子皇后が、少女時代に読まれ、心に刻まれた読書の記憶を語られたものでした。
子供時代の本の感想といった域を超えた高度な内容で、優しく、しみじみとした、高貴な語り口とともに、鮮明に覚えています。

美智子皇后は、自らの来し方と重ね合わせ、多感な少年・少女時代における読書の大切さを、一貫して訴えてこられたのではないでしょうか。

子供たちが読書の習慣を身につける上で、保護者の役割は大きいと思います。幼い子供に、童話などを読んで聴かせてあげることは、素晴らしいことだと思います。
また、学校でも、子供たちが本に親しむことができるような環境を整えることが必要です。読書に親しむことで豊かな感性を育むとともに、本で調べる習慣を身につけ、自発的な学習意欲に結びつけて行ければと思います。

子供たちに読書の習慣を身につけてもらう上で、 学校図書館における学校司書の役割は重要です。
神戸市では、平成26年度に初めて小学校20校、中学校10校にモデル的に学校司書を配置しました。
来年度は、引き続き、予算措置を講じ、最終的には全ての小学校・中学校に配置していきたいと考えています。


2015年2月8日
から 久元喜造

デトロイトの債務調整計画

日経新聞「経済教室」(2015年1月26日)に、「デトロイト市再建計画の教訓」と題する論文が掲載されていました。
執筆者は、小西砂千夫氏(関西学院大学教授)と犬丸淳氏(自治体国際協会ニューヨーク事務所上席調査役)です。

2013年7月23日のブログ 同年10月17日のブログ でも取り上げましたが、かつて自動車王国の名声をほしいままにしたデトロイト市の破産(2013年7月18日)は、内外に大きな衝撃を与えました。

米国自治体の破産では、債務の削減、すなわち債権放棄が行われるのが普通です。
小西・犬丸論文によれば、今回の事案では、債券の元金カットの大半は、債務保証をしていた地方債保証会社が蒙ったようです。デトロイト市の財政悪化は相当前から周知の事実であり、「それを承知で債務保証した地方債保証会社に厳しい結果となるのは妥当」です。
一方、職員も痛みを甘受しなければなりません。
退職職員の年金債務のカットは40%にとどまりましたが、退職者医療保険債務は90%がカットされることになりました。

我が国においては、自治体が財政危機に陥っても債務の調整はなされず、自治体は、金利も含めて全額を返済しなければなりません。
このため、小西・犬丸論文が指摘するように、返済が可能な範囲で財政悪化を食い止める必要があります。
制度としては、自治体健全化法が、共通の財政指標による財政状況の公表を自治体に義務づけ、指標が一定以上悪化すると、段階に応じて健全化への措置が発動されます。
これはこれで合理的な制度だと思います。

我が国では、財政健全化のための計画作成・承認にはほとんどコストがかかりませんが、信じられないことに、デトロイトでは1.8億ドルもの弁護士費用などの経費が発生したそうです。


2015年2月5日
から 久元喜造

係長試験の改善方策

2月1日のブログ で24年前の神戸市係長試験のことを書きましたが、2月3日に、今年度の試験による選考結果が発表になりました。
神戸市の係長試験には、次の対象区分があります。
A選考:30代の若手職員
B選考:40代の中堅職員
C選考:50代の中堅職員

現時点での合格倍率は、全体で、2.6倍。
受験資格を持つ職員のうち受験した人の割合を示す受験率は、次のとおりでした。
          
A選考:合計 30.3% 男性 65.2%  女性 8.6%
B選考:合計 8.3%  男性  10.0% 女性 6.2%
C選考:合計 2.7%  男性 4.0%  女性 1.0%

全体としての受験率は高いとは言えず、とりわけ、女性の受験率は極めて低い水準にとどまっています。
職員の中の女性の割合は年々高まっており、平成26年度の神戸市職員試験の合格者のうち女性が占める割合は、全区分で、49.0%、このうち、大卒一般行政で、58.8% となっています。
このような状況を考えると、女性職員の係長試験受験率の低迷は、組織としてきわめて深刻に受け止めなければなりません。

そこで、人事委員会では、平成27年度から、次のような改善を行うことにしました。
まず、若年層の結婚、出産、育児などのライフサイクルに配慮し、A選考の受験開始時期を2年早めます。
また、日頃の勤務ぶりから係長としてふさわしいと評価できる職員を係長に登用することとし、40歳以上でA選考の受験資格を満たす職員を対象に、試験によらない選考区分を導入します。
このほか、B選考とC選考の統合、出産・育児を理由とした受験延期制度の拡充などを行います。

まずは、この成果に注目したいと思いますが、あわせて、係長の職務と責任、処遇のあり方、女性職員の勤務環境などについても、検討を進める必要があると感じています。


2015年2月3日
から 久元喜造

神戸イチゴ輸出への取り組み

神戸では、イチゴの栽培が盛んです。
その歴史は古く、1920年代に、今の神戸市北区有野町の二郎(にろう)で始まったと言われています。
現在、北区と西区で153戸の生産者があり、約30haの栽培面積があります。

神戸の生産地は、大消費地に近いという強みがあり、ぎりぎりまで「完熟」させて、採れたての新鮮なイチゴを消費者に届けることができます。
神戸では、気候や消費者ニーズを考慮して、多彩な品種が栽培されています。
生食のほか、神戸が誇るスイーツにも使われます。
「章姫(あきひめ)」「さがほのか」「紅ほっぺ」「やよいひめ」「さちのか」「おいCベリー」など、12月から6月まで、多くの品種を楽しむことができます。

神戸市では、神戸イチゴを海外に輸出する取り組みを進めています。
輸出先として選んだのは、まず香港です。
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12月に、農政部の幹部や関係者が香港に出向き、香港のバイヤーに、神戸イチゴが世界に通用するかどうかの品質確認をしましたが、高い評価をいただきました。
現地の新聞にも掲載されました.
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まずは航空輸送でスタートし、今後は、コストの低減も見込まれる海上輸送に挑戦します。
試験的に海上輸送を行い、2月10日には、香港シティスーパーか香港そごうで販売し、プロモーション活動を行います。

香港での販売価格は、国内よりもはるかに高く、輸出が軌道に乗れば、生産者には大きなメリットがあります。新規就農にも結びつけることができると考えられます。
今後の展開が楽しみです。


2015年2月1日
から 久元喜造

KK神戸市時代の係長試験

金曜日、少し書類に目を通す時間があったので、改めて昨年寄せられた職員アンケートの一部を読み返していたところ、ある職員が昔の新聞記事のコピーを添付してくれていました。
「KK神戸市」「し烈な係長試験制」という見出しの記事で、平成3年11月25日の日付があり、全国の地方紙に掲載されたもののようです。

「神戸市では、どんなに有名な大学を出ていようと、どれほど能力があろうと、「係長試験」にパスしない限り係長以上には昇進できない。一生ヒラで終わる」
という書き出しで、係長試験が8-10倍の難関であること、そして、係長試験に何度も失敗して市役所を退職し、司法試験や公認会計士試験に合格した人がいるほど厳しかったことが記されています。

合格するために必死で勉強する職員たち。
夜10時ごろ帰宅して、午前2時まで勉強、通勤電車の中でもテープ学習、昼休みも弁当食べながら勉強、日曜は朝から夕方まで図書館で勉強・・・
記事は、勉強、勉強で埋め尽くされています。
まさに株式会社神戸市を支えた職員のみなさんの熱気が、この記事からいきいきと伝わってきました。

この記事から24年の歳月が流れ、この間、震災があり、時代は大きく変わりました。
残念ながら、係長試験を受けようとしない職員が増えており、活躍が期待される女性職員の受験率は、6%台に低迷しています。
より大きな責任を持った仕事ができるポストに就こうという意欲が凋んでしまった組織に未来はありません。

過去に回帰するのではなく、今の時代にふさわしい、新しいありようでの管理職登用が問われています。
人事委員会から、係長昇任制度の見直しについて報告を受けており、その成果に注目していきたいと思います。