久元 喜造ブログ

2019年1月23日
から 久元喜造

組織への「さん」づけに関する悶々・・・


神戸市役所にお世話になって6年余りが過ぎましたが、どうしても違和感を感じることのひとつが、「さん」付けです。
多くの職員のみなさんが、ほかの局や部に「さん」を付けるのです。
「〇〇局ですが、各局さん には、大変お世話になっています」
〇〇局さん には、・・・にご協力いただき、ありがとうございます」
といった風に。
私のところに説明に来る時にも、
「これは、〇〇局さん からこういう風にきいております」
といった説明が行われます。

私も、36年間、国や地方自治体で仕事をしてきましたが、ほかの組織に「さん」を付ける風習は、神戸市が初めてでした。
兵庫県庁の幹部の方に尋ねてみましたが、そのような風習はない、とのことでした。
民間企業でも、聞く限りそんなことはないようです。

正直申し上げ、説明できない違和感に悶々としてきました。
やめてください、とお願いする理由を理屈では説明できません。
言葉狩り をしているように受け止められ、反発を買う恐れもあります。
そんなわけで、庁内の会議でこのことを口にしたことはありません。

しかし、どうしても違和感を禁じ得ないのです。
さん」を付けるのは他人に対してですから、職員のみなさんは市役所のほかの組織を身内と思っていないのではないか、そうであれば、縦割り、割拠主義の現れか、とも思ってしまいます。
会議や説明のとき、組織に「さん」を付けられると、それが違和感となって耳の中に不協和音のようなものが響き、説明してくれている内容がおろそかになってしまうのです。

正直、この風習は、ほかの行政組織とはかけ離れたものであるように思います。
なんとか善処していただければ、ありがたく存じます。


2019年1月20日
から 久元喜造

福田直子『デジタル・ポピュリズム』


サブタイトルは、「操作される世論と民主主義」。
帯には、「捏造され 誘導され 分断される現代」。
ともに本書の内容が端的に表現されています。

「第1章 ビッグデータは監視し、予測し、差別する」は、想像どおりの表題ですが、アクシオム社、データロジックス社、エプシロン社といったデータブローカーが米国で急成長していること、そして今や、MBA(経営学修士)よりもデータサイエンティストが花形職業となり、引く手あまたとなっていることを初めて知りました。
米国のように政治資金規正が緩い国では、集金力のある陣営が彼らを駆使し、有利にネット選挙を展開できることが容易に想像できます。

そして第2章では、まさにそのような「心理分析」データを使った選挙戦術が生々しく報告されます。
すでに2012年の大統領選挙では、陣営に情報を送った有権者に「クッキー」が送られ、購読雑誌、所有している車、フェイスブックへの「いいね!」の傾向などの情報が分析されて、関心分野に沿ったメールが送られていたと言います。

2016年の大統領選挙では、さらにこれが進化します。
地理的、統計学的な情報を5000のデータポイントで分析して米国人を32種類のパーソナリティーに分け、それぞれの属性にふさわしいマイクロターゲット広告が用意されました。
しかもそれらは、激戦区の有権者に集中的に送られたのだそうです。

このほか、偽ニュースの作られ方、急速に進む「ネットバブル」現象、ボットによるツイッターへの書き込みと拡散、売買される「いいね!」ボタンなど、想像を超えるネット世界の現実に戦慄を覚えるばかりでした。
この現実に、どう対応すればよいのか・・・


2019年1月18日
から 久元喜造

「アーバンイノベーション神戸」始動!


昨日まで、神戸新聞で全6回のシリーズが掲載されました。
IT市役所 ミライ形」という見出しもつけられていました。
スタートアップ企業と市職員が一緒になって、地域や行政の課題を解決する取り組みです。

きっかけは、2015年6月、サンフランシスコに出張したとき、市の職員とスタートアップ企業のみなさんが議論をしている姿を見たことでした。
その生き生きとした、楽しそうな雰囲気にとても新鮮な感動を覚えました。
これを神戸で実現できないかと考えたのです。

長田区では、子育てイベントをスマホで見つけることができるアプリを導入しました。
すると、参加者が月当たり550人から800人へと、約1.5倍に増えました。
チラシでしか知ることができなかったイベントを、同じ悩みを持つお母さん、お父さんたちが知り、子育てに関するコニュニティが広がりつつあります。

20以上の窓口がある東灘区役所では、タブレットアプリを開発し、来庁者の窓口案内をデジタル化しました。
スムーズに案内することができるようになり、来庁者の案内時間は最大で約半分になります。

政府(Government)に技術(Technology)を積極的に取り入れようとする、GovTech(ガブテック)の動きが日本でも始まっています。
2月10日には、東京で他の自治体のみなさんとも議論するイベントを開催します。

地域や行政の課題への先端テクノロジーの活用は、市民サービスを向上させるとともに、スタートアップ企業のみなさんに活躍の機会を提供し、職員の発想を豊かにすることにもつながります。
これまでの成果を踏まえながら、今後さらにたくさんの業務に広げていきたいと思います。


2019年1月15日
から 久元喜造

「成人式」は20歳のままでよいのでは。


昨日、ノエビアスタジアム神戸 で、神戸の成人式、「神戸市成人お祝いの会」が開催されました。
神戸の成人式は、毎年、華やかな中にも厳粛な雰囲気で行われます。

民法の成人年齢が、2022年4月に20歳から18歳に引き下げられることから、今後の成人式をどうするのかが議論になっています。
私は、2022年以降においても、現行どおり、20歳になるみなさんを対象として、時期も1月のままで開催するのがよいのではないかと感じています。
昨日お会いした新成人の代表6人のみなさんも、全員が同じ意見でした。

すでに選挙権年齢は18歳に引き下げられ、これに民法の成人年齢の引き下げが続くことは、確かに大きな制度改正です
しかし、18歳のみなさんは、飲酒、喫煙が禁じられており、また少年法の対象年齢も20歳以下のままです。
つまり、全体として考えれば、成年に関する現行諸制度は、18歳、19歳のみなさんを完全な大人とはみなしていない、と言えます。

また、18歳という時期は、進学、就職の岐路に当たり、多くのみなさんが落ち着いた気持ちで成人式に臨むことができるのか疑問です。
大学進学を希望するみなさんは、受験シーズンに当たります。
2024年度からは大学受験の方法が抜本的に変わる予定となっており、大きな議論を呼んでいます。
2022年、2023年の頃は、受験生のみなさんに不安な心理が広がっていることも懸念されます。
このような中で、18歳のみなさんを対象として「成人式」を開催することは、現実的には無理があると思います。

まだ時間がありますから、議会をはじめ各方面の意見も聴きながら検討していきたいと思います。


2019年1月12日
から 久元喜造

神戸の歴史「県政150年」「明治150年」


昨年は、神戸開港150年、兵庫県設置150年の年でした。
初代兵庫県知事、伊藤博文公の台座周辺の環境整備を行ったことを踏まえ(2018年10月12日のブログ)、伊藤博文公の銅像・台座や大倉山の整備を記した「神戸市史」の補遺を編むことができないか、企画調整局にお願いしていたところ、昨年12月に、神戸市史紀要「神戸の歴史」第27号 として刊行することができました。
年始に読みましたが、たいへん興味深い内容でした。

研究論文は、以下のとおりです。
瀧井一博「開港期神戸と初代兵庫県知事伊藤博文」
津熊友輔「伊藤博文銅像・台座と大倉山公園」
山本一貴「幻の神戸市公会堂の建設計画と設計競技」

瀧井論文の冒頭には、神戸海洋博物館のメインエントランスに置かれてある、19世紀英国の軍艦、ロドニー号模型の写真が掲載されています。
1868年1月1日、神戸開港の日、ロドニー号を旗艦とする英国艦船団12隻が兵庫港に来航します。
このロドニー号に長崎から乗船して神戸の地に降り立ったのが、後の伊藤博文公でした。
同論文は、初代兵庫県知事としての事績、そこから垣間見える伊藤博文公の政治思想の原点について語っています。
津熊・山本両論文は、それぞれ銅像・台座と公会堂建設をめぐり、戦前の大倉山で展開された物語です。
公会堂の設計コンペに応募された作品の写真も掲載されています。

お忙しい中、論文を執筆してくださいました瀧井一博先生をはじめ研究者の先生方、紀要を編んでくださいました神戸市文書館のみなさんに感謝申し上げます。
本号は、定価500円(税込み)で市内書店で販売されています。
店頭で手に取ってご覧いただければ幸いです。(文中敬称略)


2019年1月7日
から 久元喜造

本邦初?「つなぐ課」設置


来年度の組織改正で検討しているのが、「つなぐ課」の設置です。
組織と組織をつないで、政策課題に一体となって対応することができるようにするための取り組みです。
国でも地方自治体でも、縦割り行政の弊害は、頭の痛い問題であり続けてきました。
とくに国、規模の大自治体では、組織の階層が多く、細分化され、国民・住民から見れば、どこで何をやっているのかわかりません。
切実な課題を抱えて相談に訪れた市民や企業がたらい回しにされ、あちこちに足を運ばされたりしています。

神戸市でも、縦割り行政の打破を目指すための取組みは進めてきました。
「市民・職員協働プロジェクトチーム」のほか、庁内のプロジェクトチームを設置し、有益な提言を出してもらったことはありますが、結局は、各課室それぞれの施策として具体化されるという改善策にとどまってきました。
縦割り行政の抜本的な改革には、結びついていません。

新年度、企画調整局に設置を検討している「つなぐ課」は、定常的な仕事は持たず、ひたすら各局部、課室の橋渡しを行う組織です。
特定の政策課題に対して、どのような施策が行われているのか、それらが整合性のとれた形で、連携をとりながら実施されているか、市民に届いているかなどを点検します。
役所の中の行政組織を「つなぐ」だけでなく、市民、地域団体やNPOなどと行政を「つなぐ」役割も期待しています。
「つなぐ課」の職員に求められるのは、リサーチ能力です。
ある意味、記者のような取材能力が求められる仕事です。
まずは、ひたすら庁内、地域を歩き周り、丹念に取材し、問題の所在を明らかにしてほしい。
縦割り打破のため、是非、成果を上げていきたいと思います。


2019年1月4日
から 久元喜造

神戸市「新年合同祝賀会」


御用始めのきょう、ポートピアホテルで、恒例の合同新年祝賀会が開催されました。
経済界、政界、行政、文化・スポーツをはじめ各界の約1,600名が出席されました。
開会に先立ち、スーパーストリングスコーベ による弦楽合奏が披露されました。


昨年暮れ、松方ホールで、スーパーストリングスコーベ の演奏を聴き、たいへん感動したことを想い起します。
私からは、今年も世界水準の素晴らしい演奏を、多くのみなさんに届けていただくよう、期待を申し上げました。

今年は、1889(明治22年)に神戸市が市制を施行して、130年になります。
そしてこの年、新橋と神戸間の鉄道の全線が完成し、東海道本線が開通しました。
神戸は、海上交通・陸上交通の拠点として発展してきた都市です。
私からは、昨年12月22日の大阪湾岸道路西伸部着工式、24日の三空港懇談会の開催、27日の北神急行の神戸市交通局への譲渡交渉に関する阪急電鉄との共同記者会見に触れつつ、今年は、陸・海・空の要衝としての神戸をさらに発展させる決意を申し上げました。
人と物の流れをさらに活発化し、神戸と神戸経済が関西全体の発展に寄与できるよう、全力で取り組んでいきます。

人口減少時代に入り、神戸の都市としての価値、ブランド力を高めていく取り組みが求められます。
今年は、我が国で初めてのラグビーワールドカップが神戸でも開催されます。
たくさんのみなさんに神戸の街を満喫していただけるよう、神戸観光局とも連携し、態勢強化を加速させます。
神戸を見違えるような街に進化させることができるよう、全力で取り組んでいきますので、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


2018年12月31日
から 久元喜造

神のお告げに背いたかもしれない。


今年、5月、丹生神社に参拝し、おみくじを引いたところ、「末吉」でした。

「風さわぐ 秋の夕は 行船も
いりえ しづかに 宿を定めて」

運勢は、
何事も進みいずるは宜しからず
心静かに諸事控え目にし、これまでの職業を守り、身を慎みて勉強すべし。
その内に悪しき運気去りて幸福の時来るべし

とありました。

一年を振り返ると、迷うところもありましたが、諸事控えめにせよ、というこのお告げは、あまり守らなかったように感じます。

このおみくじを引いてほどなく、市役所にヤミ専従が横行している、という情報に接しました。
当局も含めた市役所ぐるみの慣行であることが推認され、不用意に動くと、文書の改ざんなど隠ぺい工作が行われる可能性も否定できませんでした。
ずいぶん悩みましたが、9月には第三者委員会を設置し、徹底的な調査に踏み切りました。
これまでの調査では、この悪しき慣行の淵源は昭和20年代にまで遡り、数十年にわたって続けられてきたことが明らかになってきています。

北神急行の運賃問題は、これまでも悩みの種でした。
抜本的な引き下げを実施するには、神戸市交通局がこれを引き受けるしかないと思い定め、水面下で協議を開始しました。
御用納めの直前ぎりぎりに、阪急電鉄と交渉開始について合意し、共同記者会見を行うことができました。

いずれも、前に進めるには大きなリスクを孕んだ課題でした。
結論は、来年に持ち越されます。

心静かに年を越し、新しい年を迎えたいと思います。
年が明けると、スピーディーに作業を進め、速やかに結論を出していきたいと考えています。
今年一年、お世話になりましたすべてのみなさまに、心より感謝申し上げます。


2018年12月28日
から 久元喜造

すでにあるインフラを活用すべきだ。


12月22日、大阪湾岸道路西伸部の起工式が行われました。
これまで待ち望まれながら、なかなか進まなかったプロジェクトが始動しました。
遅れている関西のインフラ整備。
スピード感を持って取り組んでいくことが大事です。

同時に、人口減少時代を迎え、新しいインフラ整備への投資とともに、すでにあるインフラをどう有効活用していくのか、という視点も大事です。
そこで浮かび上がってくるのが、30年前に開通した、 北神急行 です。
神戸電鉄との結節点の谷上駅から、新幹線の新神戸駅まで、およそ8分、神戸の玄関、三宮まで、わずか10分で結びます。

抜群のアクセス性を持ちながら、利用者数は伸び悩んできました。
理由は、高い運賃です。
谷上駅から新神戸駅までは、北神急行が、新神戸駅から三宮までは、神戸市営地下鉄が運行します。
神戸市と兵庫県が毎年2億7千万円を補助してきましたが、初乗り運賃がかかる結果、谷上から三宮までは、540円です。
ほぼ同じ運賃で、阪急三宮からは、京都市内の桂まで行ける料金です。

高すぎる運賃をさらに引き下げて、北神急行の利用者増を図り、神戸市北部の活性化を目指したいと、阪急電鉄と水面下で協議を進めてきましたが、大きな方向性で意見が一致し、神戸市交通局が北神急行の経営を引き継ぐ方向で交渉を開始することで合意しました。

人口減少時代を迎え、必要なインフラを整備するとともに、すでにあるインフラを有効に活用して、街の活性化を図っていくことが必要です。
今回の交渉がうまく行けば、ほとんど投資を行うことなく、神戸の活性化に大きな一歩を踏み出すことができます。
実現に向けて、全力で取り組んでいきます。


2018年12月25日
から 久元喜造

8年ぶりの「関西三空港懇談会」


今朝の新聞各紙が報じていますように、昨日、大阪で、「関西3空港懇談会」が開催され、出席しました。
関西国際空港、伊丹の大阪国際空港、そして神戸空港の役割分担などを議論する懇談会で、国土交通省、関係自治体の知事・市長、㈱関西エアポート、経済界などから構成されます。
前回開催されたのは2010年ですから、8年ぶりの開催となります。

この間、関西の航空需要は大きく拡大しました。
この4月には、神戸空港のコンセッションが行われ、3空港一体運用が実現しました。
また、台風21号による被害を踏まえた災害対応力の向上も課題となっています。

昨日の懇談会では、これらの環境変化を踏まえつつ、3つの空港の最適活用のために何をすればよいのかについて、議論が交わされました。
私からは、関西国際空港を基幹空港として、3つの空港が適切に機能分担しながら関西全体の航空需要の増大に寄与していくことが重要であること、そして、3空港の一体運用が実現した今、実質的な運営主体である㈱関西エアポートの意見を尊重する必要があることを申し上げました。
その上で、まずは、発着枠の拡大、運用時間の延長などが求められることを説明しました。

懇談会の議論や雰囲気からは、神戸空港の役割拡大についての理解が深まっていることを感じました。
終了後の記者会見で、座長の松本正義関経連会長は、「短期的には神戸空港の利活用が議論の中心になる」とおっしゃっています。
神戸空港をめぐる環境は、おかげさまで、大きく変わってきています。
今日の議論を踏まえ、3空港の利活用についての議論を加速させ、ひとつずつ具体的な成果に結実させていくことができるよう、全力で取り組んでいきます。