久元 喜造ブログ

2020年6月12日
から 久元喜造

医療者応援ファンドご支援への感謝


新型コロナウイルス感染症の治療や予防の最前線では、医師、看護師などの医療従事者のみなさんが、命を守るために、昼夜を問わず奮闘されています。
とくに神戸では、市内の病院で院内感染が発生し、関係者は、過酷な状況の中で社会的使命を果たされました。
このような状況が報じられると、医療従事者のみなさんを支援したい、感謝の気持ちを届けたいという多くの声が寄せられました。
そこで神戸市は、(財)こうべ市民福祉振興協会と連携して「こうべ医療者応援ファンド」を創設しました。
上のロゴマークは、市内で活動しているデザイナー有村綾さんによるものです。
缶バッジも、 しあわせの村 の中にある障害者施設で製作されています。

寄付金の受付は4月21日から始まりました。
「ありがとう」「応援しています」「心から感謝します」という医療従事者へのメッセージとともに、多額のご寄付をいただき、5月の黄金週間明けには、3億円を超える寄付金が寄せられました。
少しでも早くご支援を届けるため、5月12日にファンド配分委員会を開催し、第1弾、3億円の配分を決定し、医療機関にお届けしました。
寄付金は、医療従事者への手当の加算、飲食等の提供、医療従事者の心と体のケア、家族への感染防止や仮眠のための宿泊施設の利用、その他勤務環境の向上に充てられています。
その後も、多くの寄付をいただいており、昨日6月11日現在、寄付金の総額は、4億7596万円となっています。
心より、感謝申し上げます。
今は小康状態にありますが、私たちは第2波の襲来に備える必要があります。
医療従事者のみなさんのご苦労が少しでも軽減されるよう、全力で取り組みを進めていきます。


2020年6月6日
から 久元喜造

指昭博『キリスト教と死』


神戸市外国語大学学長・指昭博先生のご著書です。
あらためてキリスト教の死生観について学ぶことができました。
天国とは何か、地獄とは、最後の審判は何を意味するのかなど、キリスト教の教義をなす基本的な概念が、絵画や壁画、墓標などを交えながらわかり易く説かれます。
煉獄は「最後の審判」を待つ場所であり、煉獄思想はスコラ哲学によって体系化されたとされます。
プロテスタントの教義は、聖書には書かれていない煉獄を認めず、カトリックの世界観と大きく異なっていることが理解できました。

本書の特徴は、誰も経験したことがない死の世界を、葬式、墓、モニュメントなど多角的な視点から具体的なイメージとして提示していることです。
歴史的遺産や慣行などともに、死を可視化しようという試みかもしれません。
「第3章 死をもたらすもの」では、ペストが取り上げられます
指先生が本書を上梓されたときは、まだ新型コロナウイルスは確認されていませんでしたが、当時の人々が今で言う感染症と格闘した状況が語られ、改めてとても興味深く読みました。
指先生のご専門のエリザベス時代には、繰り返しペストの流行があり、ロンドンの劇場は夏場には休業するのが普通で、実際に流行するとすぐに閉鎖になったと言います。
北部の中心都市ヨークなどでも、夏場の祝祭で上演された大規模な市民主体の聖史劇が、16世紀には頻繁に中止されたそうです。
当時の人々は、今でいう感染症の蔓延と隣り合わせに生き、それは日常的な風景であったことが窺えます。
今とは比べ物にならないくらい膨大な死者を出した当時の人々にとり、人の死は、おそらくとても身近な存在であったのではないかと感じました。


2020年6月2日
から 久元喜造

定額給付金は受け取ることにしました。


特別定額給付金の申請書が、私にも5月20日に届きました。
もともとは、家内の分も含めて辞退しますと記者会見でも申し上げましたが、改めて考えた結果、給付金の支給を受けることとし、申請を行いました。
考えを改めた理由は、まず、全国民すなわち地域住民に一律交付するという給付金制度の趣旨を尊重すべきではないかということです。
私が受け取りを辞退することがほかの方の行動に影響することはないと思われますが、仮に神戸市内において辞退の動きが広がるとすれば、この施策が設けられた趣旨に反することになります。
もう一つの理由は、支給を受けてこれを神戸市内の公益性の高い活動に寄付することも、公職選挙法上厳格に禁止されており、だからと言って、神戸市外の活動に寄付することについても、神戸市民に奉仕するという自らの使命から見ていささかの躊躇を覚えたからでした。

最終的に辞退も選択肢に入れながら、神戸市にも恩恵を与えていただいている域外の団体はないかと思いを巡らし、思いついたのが、 香美町 への寄付でした。
兵庫県北部、日本海に面する美しい町です。
2014年(平成26年)4月に神戸営業所を神戸市内に開設し、特産物の販売促進や流通経路の開拓に力を入れて取り組まれています。
いまでは、神戸市内の様々な飲食店が香美町の多様な食材を取り扱っています。 (香美町のホタルイカを味わおう!)
神戸営業所の活動は、香美町、神戸市双方の地域経済に貢献いただいています。
まだ特別定額給付金は振り込まれていませんが、昨日、神戸営業所を通じ、寄付させていただきました。
いくばくかでも香美町神戸営業所の活動のお役に立つことができればと願っています。


2020年5月24日
から 久元喜造

西東三鬼『神戸・続神戸』


歯科医で俳人、異色の作家、西東三鬼(1900 – 1962)の連作短編小説です。
昭和17年冬、「私」は単身東京から脱走し、夕方、神戸の坂道を歩いていました。
「バーで働いていそうな女」が歩いていて、「私は猟犬のように彼女を尾行」します。
そして、そのままバーに入り、1時間後にはその女からアパートを兼ねたホテルを教わるのです。
それは、トーアロードの中途にある「奇妙なホテル」でした。
このホテルを舞台に、不思議なドラマが1話ずつ展開されます。

長期滞在客は、「白系ロシア女一人、トルコタタール夫婦一組、エジプト男一人、台湾男一人、朝鮮女一人」。
日本人は「私」のほかに中年の病院長一人、あとの10人はバーの女たちです。
まさに「戦時とも思えない神戸の、コスモポリタンが沈殿しているホテル」です。
ホテルの裏には銭湯があり、2,30人の客のうち日本人は、2,3人。
「脂肪太りの中国人、台湾人・・・コサック人。彼等のそれぞれ異る国語が、狭い銭湯にワーンと反響」します。
港にはドイツの巡洋艦と潜水艦が、脱出の航路をアメリカの潜水艦に監視されて出るに出られず、水兵たちはホテルの女目当てに坂道を登って来るのでした。
独特の文体で語られる物語は、奇想天外で、ハチャメチャで、悲しいのですが、戦時下、死と隣り合わせにある日常がそうさせるのでしょうか、どこか吹っ切れているのです。

空襲でホテルも焼けてしまい、「神戸」に登場する人物の大方は死んでしまいます。
一方、「私」は、「空襲をみすみすこのホテルで待つ気はな」く、明治初年に建てられた異人館に引っ越します。
そして、米軍占領下の戦後が「続神戸」で語られることになります。


2020年5月19日
から 久元喜造

神戸市独自の家賃支援策が始動。


神戸市独自の家賃助成が、きょうからスタートしました。
ビルオーナーへの支援策です。
テナントとして入居されている店舗のみなさんからの、固定費である家賃負担の軽減が不可欠であるとの切実なご意見を踏まえ、実施することにしたものです。
店舗側が家賃負担に耐えかねて退去を余儀なくされた場合、ビルオーナーの側でも機会損失が生じます。
新たな店舗出店が厳しい状況の中で、できうる限り、現在のテナント契約を継続していただくことが求められると思います。
国においては固定資産税の減免やその他の税制上の措置を講じることとされています。
神戸市は、これに加え、単独の施策として、4月と5月の2か月分の賃料を2分の1以上減額していただいた場合に、減額分の8割(上限200万円)を助成することといたしました。

中小企業等への家賃負担の軽減

ビルオーナーのみなさんにおかれましては、今回の支援策を活用していただき、テナントのみなさんと末永い契約関係を保つための賃料水準について改めてご検討いただきたいと存じます。
テナントのみなさんにおかれましては、今回の支援策を踏まえ、ビルオーナーのみなさんと、賃料水準について改めてご協議いただきたいと存じます。
ビルオーナー、テナントのみなさんが、現下の厳しい状況に対する危機意識を共有していただき、共に乗り越えるための方法について話し合いを行っていただきたいと考えます。
きょうからコールセンターを設置しましたが、すでに400件を超える照会をいただいています。
持続化給付金などほかの支援策とともに、神戸市の独自施策も活用していただき、力を合わせて困難な状況を乗り切っていきたいと思います。


2020年5月14日
から 久元喜造

里山居住 ― コロナ時代の新しい暮らし方 ―


神戸の特徴は、海と山、自然に恵まれていることです。
東京都区部と大阪市は、ほとんどが人口集中地区ですが、神戸には六甲山・摩耶山のほか、西区、北区を中心に豊かな里山が広がっています。
茅葺民家が数多く残り、由緒ある神社仏閣もたくさんあります。
自然環境と文化遺産が一体となった魅力があります。
大消費地に近いという利点を生かし、農業生産も盛んです。

しかしながら、高齢化が進み、耕作放棄地が広がり、人口が減少している集落もあります。
かつて薪炭林として維持されてきた山林も、手入れが行き届かず、竹藪の繁茂など山林の荒廃が進んでいます。

これらの課題を、地域が主体となり、域外からの知恵を入れながら解決していくことができれば、神戸の農村・里山地域は、市外からの移住・定住の受け皿となることができます。
このような視点から、神戸市は、「神戸 農村・里山活性化ビジョン」を策定しました。
・持続可能な農業の振興
・農村定住環境の整備
・自然文化環境の保全
これら3つを柱に、具体的な政策展開を強力に進めます。

新型コロナウィルス感染症という未知の存在との遭遇は、自然との共生に関する価値を高めると想定されます。
里山、神社仏閣などの文化遺産を、家族や少人数で巡ることは、感染リスクも少なく、心身ともに健やかな時間を与えてくれることでしょう。
感染が収束するポスト・コロナの時代においては、集積が集積を呼ぶ東京など大都会の集住の見直しが進み、市街地、農村・里山地域それぞれの特性に応じた「新しい生活様式」の確立が求められることになるでしょう。
目の前の現実とたたかうともに、これらから何が起こるのかを見据えた都市戦略が大事です。


2020年5月6日
から 久元喜造

黄金週間後の対コロナ戦略


きょうで黄金週間が終わります。
外出の自粛を強くお願いしてきましたが、全体としてかなり徹底され、感謝申し上げます。

黄金週間後の対コロナ戦略をどう立てるのか。
緊急事態宣言が延長されました。
休業要請など法律上の権限は兵庫県にあり、指定都市である神戸市の立場もほかの市町と同じです。
兵庫県の判断に従うことになります。
たとえば、博物館、美術館、図書館については、しっかりとした「三密」対策を講じた上での再開を検討していましたが、兵庫県の休業要請を受けて、閉鎖を継続することにしました。
兵庫県におかれては、「出口戦略」という考え方をとるのかどうかを含め、明確な方針を示していただきたいと思います。

その上で、基礎自治体としてできること、やらなければならないことを、しっかりと、全力で実施していきます。
感染された方が自宅療養を余儀なくされるという事態は避け、2か所の民間療養施設を確保して万全の態勢で運営を継続します。
医療提供体制の確保、医療従事者のみなさんへの支援を行います。(こうべ医療者応援ファンド
特別定額給付金については、大都市の中でもできる限り早く支給することができるよう作業を進めます。(手続き
本市独自の店舗等の家賃減額支援についても、急ピッチで作業を進めます。
ビルオーナー・テナントのみなさまへ
さまざまな支援施策について、できる限りわかりやすい情報提供に努めます。(神戸市支援総合サイト
引き続き、家にいていただくことを基本にしつつ、外出自粛の長期化を踏まえ、徐々に野外で過ごしていただくことができるような方策も検討します。
もちろん、感染防止に細心の注意を払うことが前提です。


2020年5月3日
から 久元喜造

感染を防ぎながら公園の利用を。


市内あちこちの公園で、親子連れなどで利用されている市民のみなさんを多く見かけます。
外出抑制が長期間になり、家で過ごすことが求められていますが、ずっと家に閉じこもりっきりになると、ストレスも溜まります。
近くの公園で散策を楽しんだり、遊んだりすることは、気分転換になることでしょう。

しかし中には、遊具周辺など限られた空間にかなりの数のみなさんがいたり、グループで集まって食事をしたりするなど、感染の危険があると思われる光景も目にするようになりました。
これを心配した公園担当の職員が、公園のベンチに「飲食禁止」という張り紙をして、注意を喚起しました。
これに対し、神戸市会の議員各位から、一律にベンチでの飲食を禁止するのは行き過ぎではないか、もっとわかりやすい広報に努めるべきではないかというご意見をいただきました。
そこで改めて検討し、感染を防ぎながら公園を楽しく利用していただけるよう、わかりやすい説明をすべきではないかということになり、写真入りの利用方法に関するページを神戸市のウェブサイトにアップしました。

新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた公園利用について

まず、人と人との距離を十分にとっていただき、散歩や軽い運動程度にとどめていただきたいと思います。
飲食は、人との距離をとり、一人や家族でするようにお願いします。
バスケット、サッカー、ラグビーなど多人数で接触・密集する球技は避け、親子でのボール遊びなど少人数で楽しんでください。
遊具に子どもたちや保護者が多数集まるのはやめ、子どもたちがお互い離れて使うようにしてください。
手洗いやマスク着用などの感染予防対策の徹底もお願いします。


2020年4月29日
から 久元喜造

神戸市衛生課『神戸市伝染病史』


新型コロナ感染症という、目の前にある見えない敵との戦いに全力で取り組んでいます。
組織の総力を挙げて、今やるべきことをやらなければなりません。
同時に、感染症との戦いは、古今東西、人々が経験してきたところであり、過去の歴史から学ぶことも重要です。

仕事の合間を縫い、『神戸市史』を紐解くと、『神戸市伝染病史』からの引用があったので、早速庁内から取り寄せました。
1925年(大正14年)に、神戸市役所衛生課が編んだ労作です。

1918年(大正7年)から1920年(大正9年)にかけて蔓延した「流行性感冒」(いわゆる「スペイン風邪」)に関する記述は多くはありませんでしたが、当時の流行の様子と神戸市政の対応状況の一端を知ることができました。
「緒言」は、「現実に於ける幾多の障害を排除し、其矛盾を調和する事に於て、初めて大都市の矜持を保ち得るのである」と結ばれます。
当時、神戸市の衛生行政を担った人々の使命感が窺えます。

「スペイン風邪」の感染拡大防止には、内務省衛生局 が大きな役割を果たしました。
内務省衛生局が編んだ『流行性感冒』(1922年)は、「スペイン風邪」大流行の記録です。
出版社の 平凡社 により、2008年に復刻されました。
先見性のある出版企画だったと感じます。
しかも同社は、この貴重な資料を、5月15日まで無料で公開しており、さっそくダウンロードさせていただきました。
衛生局長通知(大正8年2月1日付)の中には「地震の震(ゆ)り返しよりも此病気の再発(ぶりかへし)は怖ろしい」という一節もありました。
平凡社におかれましては、時宜に叶った対応に敬意を表しますとともに、心より感謝申し上げます。


2020年4月21日
から 久元喜造

「こうべ医療従事者応援ファンド」(仮称)


医療現場において、医師、看護師など医療スタッフのみなさんが、厳しい状況の中で新型コロナ患者に対する医療にあたっておられます。
中央市民病院では、院内感染対策を懸命に講じながら、重症患者への治療を行っていただいています。
このような様子が知られるようになり、「医療従事者を応援するために私財を寄付して、少しでも貢献したい」というお申し出をいただくようになりました。
そこで、医療従事者の活動を応援するための寄付を市民や企業から募集し、神戸市内の医療機関に支援金を交付する仕組みを構築することにしました。
寄付に込められた医療従事者への感謝と連帯の気持ちを届けるため、神戸市がコーディネーター役になり、㈶こうべ市民福祉振興協会の中に「新型コロナ対策こうべ医療従事者応援ファンド」(仮称)を創設します。

このファンドで市民のみなさんや企業からの寄付をお受けし、一日でも早く現場の医療従事者に寄付金を届けるようにします。
資金は、各医療機関において医療従事者の職務環境の改善のために充てることとし、具体的な使途は、資金の交付を受けた各医療機関で判断していただきます。
例えば、医療従事者への手当の加算、医療従事者への飲食などの提供、医療従事者の心と体のケア、家族への感染防止などの観点からの宿泊施設の利用などが考えられます。

ファンドの創設はスピード感を持って進めます。
今週中には寄付の受入れ口座を開設し、寄付を受け入れることができるよう、財団のご協力をいただきながら作業を進めます。
具体的な交付先や金額については、財団において有識者による「応援ファンド配分委員会」を立ち上げていただいて決定し、早期の配分を目指します。