昨日、初めて、兵庫県芸術文化センター管弦楽団・定期演奏会を聞かせていただきました。
プログラムは、グリンカ:『ルスランとルドミューラ』序曲、ラフマニノフのピアノ・コンチェルト第2番、チャイコフスキーの『悲愴』です。
ピアノは、ロシアの新星ドミトリー・メイボローダ。1993年モスクワ生まれですから、21歳くらいの若いピアニストです。
大きなコンクールの賞歴はないようですが、すでに一流ピアニストの仲間入りをしている、素晴らしい才能だと思いました。芸術文化センター関係者のみなさまの人材発掘力を感じさせます。
メイボローダの演奏の特徴は、瑞々しさがあふれていると同時に、ひじょうに洗練されていることです。もったいぶった表情づけは見られず、若い演奏家にありがちな、これみよがしに自らの個性やテクニックを見せつけようというところは、まったくありません。
音の粒はきれいにそろっていて、それでいて、意味のある音にはしっかりと存在感を与えます。そして、音楽は小気味よく、前へ進んでいきます。
そんなメイボローダの演奏スタイルがよく発揮されていたのは、コンチェルトの第3楽章だったと思います。
テンポは、もちろん指揮者と打ち合わせた上でのことでしょうが、少々速め。スコアに書かれているかどうかはわかりませんが、音楽が勢いをつけて進んでいく箇所では、自然にアッチェレランドし、気持ちよく推進力がついていきます。
ロマンティックな表情を見せるところでも、過度に情感に浸ることはありません。
完成度の高い名演でした。
アンコールがあり、記憶違いでなければ、ラフマニノフのト長調作品32の5のプレリュードが弾かれました。
心に染みいる、静謐の世界でした。
続いて、もう1曲、ト短調作品23の5のプレリュード。
リズムはしっかり刻まれていますが、決して重くなることはなく、やはり自然に音楽が流れていきます。
曲は消え入るように終わります。最後の音は、不思議な浮遊感を伴いながら、ホール空間の上方に消えていきました。