久元 喜造ブログ

エンデ『鏡の中の鏡』


岩波現代文庫(丘沢静也訳)で読みました。
30の短編が収められています。
出版元の岩波書店のウェブサイトには、「ひとつずつ順番に,前の話を鏡のように映し出し,最後の話が最初の話へとつながっていく」とありましたが、短編同士のつながりは、理解できませんでした。
それぞれの物語も、幸福感のあるファンタジーではなく、不気味な、まるで悪夢のような世界が次々に現れます。
ほとんど、意味が分かりませんでした。
そこで、たまたまどこかの書店で目にした絵本のことを想い出し、ネットで購入しました。
絵本画家・junaida(ジュナイダ)による『EDNE』(白泉社)です。


どの絵も合わせ鏡で描かれていて、不思議な迷宮の世界に連れて行ってくれます。

最後のお話、第30話では、冬の夕暮れ、雪におおわれた境界(はてし)ない平原の真ん中に、廃墟の残骸がそびえ立ち、扉がひとつ付いています。

この扉の中に入り、帰ってきた者はいません。
若い闘牛士が王女に促され、扉を通り抜けます。
王女はこう呟くのでした。
「私は、この扉のむこうにいる弟のことを考えていた。かわいそうな弟ホルのことを」
彼女は、向きをかえて立ち去りながら、もう一度つぶやきます。
「かわいそうな、かわいそうなホル」

第1話の主人公は、ホル。
ホルは、からっぽの巨大な建物に住んでいて、そこでは、声に出された言葉は、ほとんど終わるこのない、こだまとなるのです。
絵本には、こう記されています。

Why go through this door.
When, and from which side.
And, who is that actually walks inside.