久元 喜造ブログ

書評『暗闇の効用』


10月14日(土)の朝日新聞書評欄を開くと、文字と背景の色が入れ替わった欄に目が行きました。
背景が黒で、文字が白なので、当然ながらとても目立ちます。
取り上げられていたのは、ヨハン・エクレフ著『暗闇の効用』。
評者は、神戸ゆかりの美術家、横尾忠則さんです。
書評の見出しは、「光害を批判  21世紀の陰翳礼讃」。

横尾さんは、ご自身の子供の頃の体験をこう振り返ります。
「子供時代の夜を回想する時、家の中の明かりは60ワットで物の存在は朦朧としていた」
「一歩外に出ると吸いこまれそうな深い闇の底」
「頭上では固唾を吞む満天の星が、ミルクを流したような天の川から滴る」
そしてこう呟きます。
「あの光の滝は今はない」と。
「今は地上の光害が、あの昔の夜空から星の光を奪ってしまった」から。

横尾さんによれば、本書で著者は、暗闇という「自然の偉大な宝を、私たちは失いつつある」と哀惜を込めて語り、「人工の光が、生物の体内時計をいかに乱しているかを明らかに」します。
横尾さんの書評は「本書は文明批評とも読めるが、21世紀のもうひとつの「陰翳礼讃」の書でもあると思えた」と閉じられます。

夜の闇の存在は、とても大事なのではないかと、以前から感じてきました。
睡眠と休息には、暗がりが必要です。
夜の闇の価値について」(2020年9月30日のブログ)で記したように、夜は、瞑想の時間を与えてくれます。
夜の闇は、魂を孤独しますが、昼の世界では見出しがたい何かに、自分が繋留されていることを感じさせてくれます。
夜の闇の価値と尊厳を尊重しながら、公共空間における危険と不安を減らし、夜も美しい神戸の街づくりを模索していきたいと思います。