三浦展氏が『ファスト風土化する日本 郊外化とその病理』(洋泉社新書y)を出版されたのは、2004年9月のことでした。
本書の冒頭では、改めてファスト風土化の問題点が以下のように指摘されます。
・世界の均質化による地域固有の文化の喪失
・環境・エネルギーへの負荷
・繰り返される破壊による街の使い捨て
・大量浪費空間の突如出現による現実感覚の変容
・手軽な大量消費による意欲の低下
・生活空間の閉鎖化による子どもの発達の阻害
この20年の間に、日本の各地でファスト風土化が進みました。
著者は「今や日本の原風景になったとすら言えるファスト風土を、今改めて考えることは意味がある」という問題意識で本書を編んだと記しています。
第Ⅰ部では、この間に進行してきたファスト風土化に新たな視点が当てられ、山内マリコさんの回想も登場します。
第Ⅱ部では、ファスト風土化に抗する実験が、第Ⅲ部では、脱ファスト風土的な開発・まちづくりの事例が紹介されます。
とりわけ興味を引いたのは、立川の GREEN SPRINGS でした。
複合再開発ではしばしば高層ビルが建つだけのひと気のない「まち」ができますが、GREEN SPRINGS はまったく異なっています。
ほとんどの建物は3階建て。
容積率が500%の敷地なのに、150%台しか使われていません。
緑がふんだんに植え込まれ、植物の種類は350種類以上。
ビオトープには、たくさんの生き物が生息しています。
立川は郊外の街として発展してきました。
三浦氏は、「郊外化」した都心から、「都市化」した郊外に都市的な文化・娯楽、猥雑さを求めて人々が集まってくると分析します。
とても興味深い視点です。