単行本や雑誌の論文で目にする過激なタイトルは、著者よりも編集者の意向でつけられることが多いと聞きますが、本書では、それが著者自身の意向であることが「あとがき」に出てきます。
著者が抱くのは、危機感です。
「長期的なスパンに立った抜本的な議論を活発にしていかなければ、地域の公共交通全般がより一層衰退したり、歩道環境のカオス化が深刻になったりするなど・・・取り返しのつかない状況になってしまわないのか」と。
驚いたのは「交通崩壊」という言葉が、国の公式文書の中で既に使われていることでした。
国土交通省が2021年に策定した第2次交通政策基本計画では、次のように指摘されています。
「地域公共交通は、人口減少等の影響により、輸送需要の縮小、運転者不足等の厳しい経営環境に置かれている。・・・このままでは、あらゆる地域において、路線の廃止・撤退が雪崩を打つ『交通崩壊』が起きかねない」。
国土交通省鉄道局は、その後財源確保に動きます。
2023年度政府予算において、道路や河川などの事業に使われてきた社会資本総合整備交付金の対象に「存続を前提にした線路や車両などのローカル線のインフラ強化策」が追加されました。
著者はこれでは不十分だとし、より抜本的な財政支援策の必要性を指摘します。
フランス、ドイツ、米国における税財源に関する制度が紹介されます。
イタリアでも近年、EUの復興基金を財源として、トラムを復活するプロジェクトの計画が相次いで立案されています。
著者の危機感はよく伝わってきましたし、豊富な各地域の事例紹介、海外の状況も参考になりました。
自治体が取り組むべき具体的な政策提言があれば、なおありがたかったです。