帯にはこう記されています。
「冒険家で作家のテッソンがバイカル湖畔の小屋で半年を過ごした日記。孤独と内省のなかで人生の豊かさを見つめ直す、現代版『森の生活』」
著者は、本書の中でひたすら自身との哲学的問答を繰り返す訳ではありません。
日記の中でかなりの部分を占めているのが、読書の記録と感想です。
冒頭「シベリアの森での半年間の滞在に備えてパリでじっくり選んだ理想の本リスト」が示されます。
D・H・ロレンス、キルケゴール、カミュなどのほか三島由紀夫の『金閣寺』もあります。
「鋼の冷たさを感じたいなら三島由紀夫を読めばいい」。
日記ではバイカル湖畔や森の自然の佇まい、生き物たちとの出会いが生き生きと描かれます。
シジュウカラが窓ガラスをコツコツと叩き、夜になると小屋の周りには、狐やミンク、オオカミ、オオヤマネコがうろつきます。
「動物の足跡は森の言葉だ」。
テッソンは、湖で仕掛けをつくってアメマスを獲り、渓流でイワナを釣ります。
森林官や漁師などとの交流も記されます。
テッソンは、彼らの家や小屋を訪れ、また彼らもテッソンの家を訪れ、ウォッカに興じます。
湖で獲れた魚が料理されて供されます。
ヘラジカは内臓も料理されて、愛犬たちに与えられます。
イルクーツクの実業家は、法令の抜け穴を利用して巨大なアウトドアパーティー用の建物を建築します。
この辺で「将軍」と呼ばれている彼は、自然保護区の森林官たちに贈り物をばらまいています。
「孤独は思考を生み出してくれる。というのも、ここでは自分自身としか会話できないから」
「孤独はあらゆるお喋りを洗い流してくれ、自分自身を探索することを可能にしてくれる」
含蓄のある言葉です。