久元 喜造ブログ

『マインド・コントロール』再読


6年前に読んだ、岡田尊司『マインドコントロール』(文春新書)(2016年9月3日のブログ)を読み直しました。
本書でまず紹介されるのは、1970年代から80年代にかけて頻発した宗教団体による「霊感商法」です。
真面目な学生や会社勤めのOLが突然姿を消し、教団の寮で共同生活を営み、高額の高麗大理石壺や高麗人参茶、印章の販売に従事したのでした。
なぜこのような「霊感商法」に付け込まれるのか、その手法が鮮やかに提示されていました。

改めて興味深かったのは、近代的なマインドコントロール技術がロシア革命から始まったという指摘です。
「パブロフの犬」で知られる生理学者のイワン・パブロフ。
彼の400頁にも及ぶ研究報告書を、レーニンはたった1日で読み終えたそうです。
レーニンは、条件付けに関するパブロフの研究を洗脳に利用する可能性を見出したのでした。
当局にとって都合の良い自白や情報提供を引き出す技術は、ソ連において開発、発展され、スターリンは政敵の抹殺のために徹底的に活用しました。
北朝鮮やハンガリーの公安当局によってどのように使われたのかも、詳しく記されます。

本書が最初に刊行されたのは2012年のことで、私が読んだのは、2016年の増補改訂版です。
「付記」で著者は、「状況は何一つ変わらないどころか、いっそう深刻化しているように思える」と記しています。
本書では、マインドコントロールが働きやすい環境とは、個人が周りとの接触を断ち、孤立化した状況であることが繰り返し指摘されます。
さらに6年が経過した今日、ネット社会の進化がそのような状況をどう変化させているかについて、改めて考える必要があると感じました。