著者は、労働社会学、文化社会学専攻の社会学者です。
建築設計の実務経験があり、二級建築士の資格もお持ちで、従来から建築家を研究対象にして来られました。
前著「職業としての建築家の社会学 建築家として生きる」(晃洋書房;2021年)と併せて読むと、著者の一貫した関心は、「建築家が社会のためにどのような役割を果たすことができるのか」にあると感じました。
本書では建築家をめぐる状況の変化を「建築家の解体」と捉え、かつてのサクセスストーリーの変容を、具体的な建築家に即して振り返ります。
議論の前提として、建築家とはどのような存在なのかについて、プルデューの<ハビトゥス><界>の理論が応用され、建築家を育成する大学教育によって「支配的ハビトゥス」を体得していく過程が鮮やかに描かれます。
「建築家の解体」が進行した後に、現代の建築家の職能として登場するのが「街場の建築家」です。
空き家の増加は大きな社会課題ですが、それを資源として積極的に活用し、空き家をリノベーションして新しい「場所」をつくる人びとが増えてきました。
そのような「プレイヤー」と二人三脚で「場所」をつくっていくのが、「街場の建築家」です。
「クライアントと一緒に施工をしたり、企画を考えたり、自ら物件を購入し「場所」づくりを主導する」建築家も現れています。
街場の建築家は、「顔の見える専門家」として「場所」の再生に関わります。
ありがたいことに、神戸では、近年「街場の建築家」の活動が急速に活発化し、荒廃していた地域が次々に生まれ変わろうとしています。
このような動きがさらに広がることが、神戸の街の再生につながっていくと確信します。