大正時代(1912年7月30日 – 1926年12月25日)は、僅か15年足らずですが、ロシア革命、第一次世界大戦など海外情勢が激変する中、日本の国力は増大し、国際的地位が向上していった時代でした。
軍縮を含めた積極的な外交が展開されるとともに、政党の活動は新たな段階を迎えます。
政党政治が軍部、元老、貴族院などとの緊張関係の下に展開され、1925年(大正14年)には普通選挙が実現しました。
一方、関東大震災の発生、スペイン風邪の席巻という制御不能な危機に政治・行政が翻弄され、混乱に立ち向かっていった時代でもありました。
本書は、激動の大正時代を、内閣の交代と政党の興亡、対米国、ソ連、中国、英国などとの外交、朝鮮統治、社会運動、皇室など多角的な視点から、20名を超える研究者により執筆された労作です。
以前読んだ、加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(2019年9月22日ブログ)で把握できた大きな時代の流れが、本書によってより立体的に理解できたように感じました。
多方面にわたる論考の中で、とりわけ興味深かったのは、「第19講 関東大震災後の政治と後藤新平」でした。
後藤新平については、越澤明『後藤新平ー大震災と帝都復興』(2018年7月1日ブログ)などでその事績に触れ、スケールの大きな仕事ぶりに感銘を覚えていましたが、本書で筒井清忠は「関東大震災後の政治においては、後藤は最大の失敗を犯し」たと厳しく指摘します。
震災後の混乱の中で政友会、憲政会などの政治家たちによる政治ドラマが生々しく描かれます。
後藤の震災復興計画は、新党計画とともに挫折していったのでした。(文中敬称略)