久元 喜造ブログ

朝日新聞社説「強行」処分批判に答える。③


前回
分限処分と懲戒処分は、職員に対する不利益処分ですから、身分保障の観点から公正に行われなければなりません。
公正な処分を担保するための手続きとしては、従来から二つの方法があると考えられてきました。
一つは、処分権者とは別に審査会などの組織を設け、この意見を尊重して、処分の可否、その内容を決める 事前審査手続き です。
もう一つは、処分は任命権者が行い、事後に独立性の高い機関が処分の当否を判断する 事後審査手続き です。

話は戦前に遡ります。
大正から昭和にかけて、政党の官僚人事への介入に対して批判が高まり、官僚の身分保障のあり方が問題になりました。
もともと文官分限令6条4号には「官庁事務ノ都合ニ依リ必要ナルトキ」に休職にすることができるとの規定があり、4号休職などと呼ばれていました。
政党はこの4号休職の規定を活用して、意に沿わぬ官僚を次々に休職に追いやったのです。
このため、1932年(昭和7年)に文官分限令が改正され、4号休職については、分限委員会への諮問を要することとなりました。
分限委員会は議決機関ではなく、諮問機関でしたが、その後の運用を見ると、事実上の拘束力を有していたと考えられています。

1950年(昭和25年)に地方公務員法が制定されたとき、分限・懲戒処分を行うにあたり、分限委員会のような事前審査手続きをとるのか、第三者機関に不服申し立てできるとする事後審査手続きをとるのかが議論になりました。
地方公務員については、人事委員会・公平委員会が設けられ、後者の方法をとることとされました。
法案が提出された国会では、この点についてどんな議論があったのでしょうか。(つづく