久元 喜造ブログ

朝日新聞社説「強行」処分批判に答える。④


前回
1950年11月、地方公務員法案は国会に提出され、審議が行われました。
分限・懲戒処分を行う手続きとして、事前・事後のいずれかを採るべきかについて、鈴木俊一政府委員は、次のように答弁しています。(1950年11月27日)

「事前審査の制度は、・・・責任を委員会に転嫁いたしまして、真に利益を保障するゆえんでない。むしろ事後において人事委員会なり公平委員会というような機関がこれを取り上げて、さらに審査し、あるいはこれを取消すというようなことがあり得るというような事後審査の制度にいたしました方が、さらに身分保障の趣旨も徹底するように思うのであります」

この答弁からは、地方公務員法の立案者は、戦前の分限委員会のような機関による事前審査を経ることなく、任命権者が自らの責任と判断において分限・懲戒処分を行う方が身分保障の観点からは優れていると考えていたことがわかります。
このような立法意図から言えば、審査会のような第三者機関を設けて処分の可否、内容を審議し、この結果に拘束力を持たせ、あるいはこれに従うこととする慣行を形成することは、運用としては不適当であると言えます。
神戸市の分限懲戒審査会の設置根拠は、地方自治法202条の3第1項に基づき附属機関を設置する条例であり、地方公務員法28条3項、29条4項に基づき分限・懲戒の手続き・効果を定める条例ではありません。
これは上記の立法趣旨を踏まえたものと考えられます。

分限・懲戒処分は、審査会の意見を参考にしながらも、任命権者の責任と判断で行われるべき です。
神戸市教育委員会は、このような観点から、今回の処分を行ったものと考えられます。(つづく