(前回)
今回の条例改正は、加害教員が職務に従事できないようにし、給与の支給を停止するもので、職員に対する 不利益処分 に当たります。
不利益処分は、職員の身分保障の観点を踏まえ、公正に行われなければなりません。
職員が理由もなく首になったり、格下げされたりするようでは、安心して仕事をすることができず、結局は行政サービスが低下するおそれがあるからです。
このような観点から、地方公務員法は、職員の不利益処分として、分限処分と懲戒処分を定めています。
分限処分は、職員に非違行為など一定の事由がある場合に身分上の変動をもたらす処分であり、公務能率の維持を目的にしています。
これに対し、懲戒処分は、非違行為などを行った職員の責任追求です。
懲戒処分が広い意味での懲罰であるのに対し、分限処分の目的は、問題のある職員が職務に従事することにより公務の遂行に支障が生じるのを防ぐことにあります。
職員の意に反する不利益処分は、法が定める分限処分と懲戒処分以外にはありません。(同法27条2項、3項)。
これに対し、朝日社説は「緊急に職員の出勤を差し止める必要が生じた際の制度について、腰をすえて検討」すべきだとします。
職員の意に反して出勤を差し止め、給与を支給しなければ、それはまさに不利益処分です。
朝日新聞は、分限処分と懲戒処分以外の不利益処分を、自治体が条例で自由に創設できると考えているのでしょうか。
いくら地方分権の時代でも、そのような条例は違法であり、職員の身分保障を著しく損ないます。
今回の事案に対する対応としては、法律の委任による条例に基づく休職処分事由の追加が最も適切な措置であったと考えます。(つづく)