久元 喜造ブログ

西村友作『キャッシュレス国家』


著者は、北京の対外経済貿易大学の教授。
中国のキャッシュレス社会の日常、そしてキャッシュレス国家がどのように進化してきたのか、どこに向かおうとしているのかについて、わかりやすく描かれます。

中国の「新経済」の大きな特徴は「決済」が起点になっている点だと、著者は冒頭指摘します。
決済サービスは、アリババのアリペイと、テンセントのウィーチャットペイがしのぎを削っており、独自のビジネス形態でユーザーを囲い込み、そこから得られるビッグデータを活用して大きな収益につなげています。

鮮魚売り場の水槽から生きた魚や貝を選び、アリペイのアプリを使って支払いを済ませると、あとは料理ができるのを待つだけ。
出来上がったら電話が鳴り、受け取り場所でレシートのついたバーコードを専用機械で読み取ると、チケットが出てくるので、引き換えに料理を受け取るというシステムです。
北京の街角で胡弓を演奏する老人の前には「おひねり」を入れる箱が置いてあり、そこにはQRコードが貼られています。
著者は、彼らへの「おひねり」にウィーチャットペイを使うのだそうです。

アリペイやウィーチャットペイには、利用者の膨大な決済情報が蓄積されていきます。
プラットフォーム側は、決済情報以外の学歴や職歴、資産、交友関係などの情報も収集し、個人ごとにスコア化します。
アリペイ系の「芝麻信用」には5つのランクがあり、それぞれのランクに応じて、デポジットが不要になったり、融資面などでの優遇が受けられるようになります。

イノベーションを支える高度な人材育成も含め、中国の「新経済」がものすごいスピードで進化し続けていることを改めて痛感させられました。