本書で語られる日常は、これまでまったく知らない世界でした。
「JKビジネス」「派遣型リフレ」という言葉も知りませんでした。
しかし、かなりの数の女性たちが、生きるためにこの世界で働いています。
行政が福祉の立場から関わらなくてもよいのか、関心を持たなくてもよいのか・・・
帯には、「生活保護は、絶対嫌です」とあります。
「彼女の決断の裏側には何があるのか?」
本書には、行政の側に存在する理由について、端的にこう説明します。
「福祉は、利用に当たって徹底的に過去を問われる世界だ。所得証明、扶養照会、医師による診断書や初診日証明、家族関係や離婚歴まで、それぞれの全ての履歴を書面で可視化することが要求される」
「生活保護を申請すると、資力調査や扶養照会が行われ、個人の収入や預貯金、資産、家族関係、就労能力まで全てが丸裸にされる」
本書には、「いびつな共助」という耳慣れない言葉がひんぱんに登場します。
この世界には、そこで生きている女性たちに、日々の生活に必要な現金を提供するのみならず、彼女たちのプライバシーを守り、ときには居心地がよい空間を提供する「共助」の仕組みがあるというのです。
同時に、そこは外の世界と隔絶されており、さまざまなリスクや理不尽が存在します。
著者は、この世界で働く人々のための無料生活・法律相談サービスを行う「風テラス」で活動しておられます。
「繁華街の風紀や性道徳を守る」から「現場で働いている人の権利を守る」へのパラダイムシフトの必要性を指摘されます。
区役所のケースワーカーのみなさんと意見交換をするとき、本書で紹介されている現実を話題にするのがよいのかどうか、正直、判断に迷います。