久元 喜造ブログ

『地方自治制度 ”再編論議”の深層』


本棚にあった本書を何気なく手に取り、懐かしくなって読み始めました。
旧知のジャーナリストお二人が、2011年、2012年頃の地方自治制度改革の「深層」を分析されています。
私は、2008年7月から2012年9月まで総務省自治行政局長として、本書で取り上げられている二つのテーマと深く関わりました。

青山彰久さん(当時、読売新聞編集委員)は、大阪都構想 について取り上げています。
2011年11月の大阪府知事・大阪市長ダブル選挙直後の熱気が伝わってきます。
ここでも取り上げられている2012年2月16日の地方制度調査会ヒアリングの模様は、今でも懐かしく想い起します。
西尾勝会長と橋下徹大阪市長とのやりとりは、緊迫感を孕んだものでした。
あれから8 年余りの歳月が流れ、大阪都構想の是非はいよいよ住民投票で決着が図られます。
長く地方自治に携わってきた者として、その結果と今後の動きに注目していきます。

国分高史さん(朝日新聞論説委員)は、野田内閣の「地域主権改革」を取り上げています。
私は、「地域主権」という概念は憲法上問題があり、「地域主権改革」で統一していただくよう掛け合ったことを思い出します。
地域主権改革を進める観点から、国と地方の協議の場が設置されたことは意義があったと思います。
一方、この観点から出先機関改革について盛んに議論が行われましたが、政権内部の政務三役からも反対論が噴出し、前に進みませんでした。
議論はもっぱら民主党内の政治家同士で行われ、実務担当者がこの問題に関わることはほとんどありませんでした。
さらに言えば、国民的議論の広がりを欠いていたとも、今から思えば改めて感じます。