神戸市立須磨水族園 では、淡水ガメの研究が進められています。
淡水ガメ専門の記録雑誌「亀楽」 を見ると、継続的で、息の長い調査と研究が行われています。
この研究姿勢や研究成果は、高く評価されるべきだと思います。
神戸でも、ふつうに見られるカメは、外来種のミシシッピアカミミガメばかりになってしまいました。
頭の側部が赤いため、こう呼ばれています。
原産地は、北アメリカ。日本では、子ガメはミドリガメと呼ばれ、大量に輸入されてペットとして売られています。
子ガメのときは可愛いのですが、大きくなると、もてあますようになって、川や池に捨てられ、繁殖しているのです。
アカミミガメが日本に侵入し始めてから、すでに半世紀が経ちました。たかが、カメの世界の話ではないかと思われるかも知れません。
しかし、日本の河川や池沼にアカミミガメしか生息せず、日本固有のイシガメがいなくなることは、たいへん憂慮すべき事態ではないかと思います。
その理由について、 神戸市立須磨海浜水族園の谷口真理さん、亀崎直樹さんは、次のように説明されています。
「アカミミガメの原産国である北アメリカには、カメを捕食するミシシッピワニが生息し、それがアカミミガメの数を抑えている。
ところが、日本にワニのような強力なカメの捕食者はいない。その結果、アカミミガメは増える。
また、アカミミガメはワニの捕食に対する戦略をとる必要がある。その結果、アカミミガメの性格は荒くなり、体も大きく、一回に産む卵の数も多くなったと考えられる。(中略)
一方、日本にはワニのような捕食者がいないため、そこに生息するイシガメの性格はおとなしく、繁殖能力もアカミミガメに比べると低いと考えられる。
つまり、北アメリカの淡水の生態系は、ワニなどの強力な捕食者に対する戦略を獲得した生物によって構成され、全体的に乱暴な生物が多くなる。
それに対し、強力な捕食者のいない日本の淡水生態系は、穏やかな生物で構成される傾向がある。急速にそれらが増殖するのは当然の結果といえる。
繁殖能力の高いアカミミガメと低いイシガメが共に生存していると、たとえ競争しなくてもアカミミガメの割合がどんどん増加することになる。今後このままアカミミガメを放置し続ければ、ますます分布が拡大し、日本固有のやさしい生態系は倒壊すると考えている。」
やはり、生態系全体に影響する深刻な事態と捉えるべきではないでしょうか。
このことは、日本の「やさしい生態系」が危機にさらされていることを意味します。
神戸でも、固有種であるイシガメは、ずっと生き続けていってほしいと願います。
それは、悠久の年月をかけて形成されてきた神戸の自然が、将来の世代に引き継がれていくかどうかに関わります。
神戸市立須磨水族園 の調査研究を踏まえ、近い将来、有効な対策がとられるべきです。