久元 喜造ブログ

崎谷明弘ピアノ・リサイタル


昨日の夕方は、「神戸まつりメインフェスティバル」の終了後、松方ホール で開催された、崎谷明弘さんのピアノ・リサイタルにお邪魔しました。
平成28年度神戸市文化奨励賞を受賞された若手ピアニストです。
プログラムに好きな曲が多かったこともあり、楽しみに伺いました。

前半は、ハイドンのピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:49 、そして、リストのロ短調ソナタです。
リストのソナタでは、目が眩むような技巧が圧倒的な迫力で繰り広げられましたが、崎谷さんは、決して力で音楽をねじ伏せようとはしません。
繰り返し反復される音楽の静まりもとても美しく、聴衆を魅了しました。

後半は、ドビュッシーの「喜びの島」に続き、 ベートーヴェンのピアノソナタ ト長調  op.14-2  をはさんで、シューマンの「フモレスケ」。
「フモレスケ」は、シューマンの情熱的な「フロレスタン」的要素、そして瞑想的な「オイゼビウス」的要素(シューマン『音楽と音楽家』)が交錯しますが、そのようなシューマンの音楽の魅力がこの上ない完成度で浮き彫りになった名演でした。
素晴らしい演奏に没入したリサイタルでしたが、プログラム全体を通して聴いた一愛好家の感想としては、ベートーヴェンのソナタが最も心に染み入りました。

今日のリサイタルは、高校生以下が無料で、小中学生と思しき姿もありましたが、聴き手は演奏に集中し、緊張感みなぎる濃密な音楽空間が現出しました。
崎谷さんのファンは確実に広がりを見せているようで、今後ますますのご活躍を期待しております。