平成の時代が終焉に近づく中、次の元号が何になるのか、どのようにして決まるのかについて関心が集まっています。
マスメディアが今の元号である「平成」がどのように決まったのかについて、関係者に取材するのも当然のことです。
しかし、デリケートな問題であるだけに、当時の関係者が何でも喋ってよいというものでもないと思います。
とくに、実務を支える官僚は、慎重な発言が求められるように思います。
こうした観点からは、朝日新聞(2018年3月5日)に掲載された元内閣内政審議室長、的場順三氏の発言には正直驚きました。
的場氏は、「元号の考案を依頼する識者」について4つの具体的な基準を挙げ、「出身大学は東大だけでなく、京大など西日本地域の大学を含めることにも留意した」と述べておられます。
また、当時の官房長官、故小渕恵三氏が以前、元号懇談会で出されたある意見について証言しておられましたが、的場氏はその意見はご自身が「とっさに思いつき、懇談会の席で発言した」と答えておられます。
官僚はあくまでも黒衣です。
官僚が重要な人事に関与したり、元号の決定に影響を与えたりしたと誇示するが如き発言は、適切なのでしょうか。
元号は天皇の在位と直結する一方、天皇には元号を決定する権限はなく、内閣が政令で定めるという微妙な緊張関係を孕んでいます。
元号の制定過程についての回想は政治家や学識経験者に委ね、官僚が奔放な発言をするのは慎むべきではないかと考えます。
官僚には退職後も守秘義務が課せられるのであり、とくに元号のような微妙な問題については、矩を超えないようにしていただきたいと希望します。