5年近く前、神戸に帰ってきてほどなく、小学校のとき担任をしてくださった先生が、その前の年に亡くなっておられたことを知りました。
もう少し早く神戸に帰っていれば、ご尊顔を拝することができたのにと、残念でなりませんでした。
想い起せば、 私たちは先生の指導で「学習帳」を書き、先生は赤インクで丁寧な書き込みをしてくださったものでした。
先生の書き込みは、いつも大きな励みで、勉学への意欲を高めるものでした。
暮れも押し迫った厳冬の日にご自宅を訪れ、先生の遺影に手を合わせました。
奥様のお話では、先生は、平日は毎日、夜の11時過ぎまで、私たちのために赤インクでコメントを書き、そして、翌朝6時には家を出られていたそうです。
奥様は、帰り際に、先生が遺されたいくつかの句と、晩年に愛読されていたというホイットマンの詩集を私に下さいました。
登校の子に歩をあわす雪の道
鈴蘭台にも雪が降り、授業をやめて、雪原での野外活動に切り替えてくださったことを想い出します。
ひとりひとりの児童に、寄り添うように接してくださる先生でした。
同時に「勉強の習慣は冬につけるのがよい。温かい布団に入りたくなる自分と闘って勉強しなさい」とも仰る厳しい面もおありでした。
尊徳像 本持つ手より氷柱垂る
猛暑のお盆に、厳冬の情景を詠まれた句を味わい、先生のご冥福をお祈りしたいと思います。
学校現場をを取り巻く状況は、私たちが子どもの頃と比べ、遥かに厳しくなっています。
懸命に頑張っておられる小中学校の先生方が、子どもたちと向き合い、寄り添うことができるよう、引き続き、多忙化対策に取り組みたいと思います。