久元 喜造ブログ

對馬達雄『ヒトラーに抵抗した人々』(中公新書)

160204
映画『杉原千畝』に触発されて読みました。
ナチスドイツ支配下でヒトラーに抵抗した人々の闘い、そして人々がたどった運命について綴られます。

映画『ワルキューレ』でとり上げられたヒトラー暗殺計画の実行者、シュタウフェンベルク大佐。
映画『白バラは死なず』で描かれた《白バラ》のグループ。
ベルリンを中心に ユダヤ人たちを匿った《ローテ・カペレ》、《エミールおじさん》などのグループ。
たった独りでヒトラーを暗殺寸前まで追い込んだゲオルク・エルザー。
モルトケなど軍部の幹部、行政官などが加わった《クライザウ・サークル》・・・

通読して感じたのは、これらの人々が、底知れない孤独感を味わいながら救国の信念を貫き通した姿です。
ヒトラーには大多数の国民の支持が集まり、敬愛の対象とされていました。
多くの国民は、ユダヤ人に何が行われているかついてうすうす感じていました。
ユダヤ人からナチスが略奪した金品に殺到する国民の写真は、この時期のドイツ人の一面をとらえています。
ヒトラーに抵抗した人々は、客観的にも、心理的にも、決定的に孤立した状況の中で、自らの信念に殉じたのでした。

残された家族を待ち受けていた過酷な措置、そして戦後たどった道筋も描かれます。
遺族たちはひっそりと世を避けるように身を寄せ、長く固い結束を保ちました。
事件に身を投じた軍幹部の未亡人の多くは、亡夫を誇りにし、再婚することなく、長寿を全うしました。
ヒトラーに抵抗した人々の行動に光が当てられるのに、かなりの歳月を要したことも、本書で初めて知りました。