久元 喜造ブログ

多数決を疑う。

sakai

複数の候補者の中から一人を選ぶとき、相対的には、ある候補者が有力でも、多数の有権者がこの候補者に否定的な判断をすることがあります。
たとえば、非常に個性的な候補者が、極端な政策の実現を主張し、かなりの支持を集めているが、多数の有権者は、この候補者やその政策に危険を感じ、
「あの候補者だけは通って欲しくない!」
と感じているような場合です。
そのような有権者の意向を反映する方法はないでしょうか。

その答えのひとつが、ボルダルールです。
1位に3点、2位に2点、3位に1点という配点にし、その合計で最大の点数を獲得した候補者を当選者とする方法です。
多くの有権者は、人気が好悪二分する候補者を3位にするでしょうから、ほかの候補者が当選する可能性が高くなります。

坂井豊貴『多数決を疑う』 (岩波新書)では、ボルダルールのほか、さまざまな選挙・投票の方法が紹介されます。
同時に、民意の反映とは何かについて、ルソーの『社会契約論』をはじめとした、さまざまな理論的考察がなされています。

選挙制度については、衆参両院をはじめさまざまな議論がなされますが、最終的にそのルールを決める主体は、選挙で選ばれる国会議員自身です。
このことは、代表民主制である以上、やむを得ないことですが、やはり、選挙制度については、有識者、専門家からなる第三者機関が衆知と見識を結集して提言を行い、その提言を尊重して、国会が最終的な判断を下すことが望ましいと言えます。
そのような検討に当たっては、本書で行われている考察も大いに参考になります。