会議などで挨拶するとき、事前に、庁内の各局が原稿をつくってくれます。
ありがたいことですが、ふだんから少し気になっていることがあります。
それは、ほとんどの原稿に、「○○を取り巻く状況は誠に厳しく」とか、「昨今の○○情勢には誠に厳しいものがありますが」とか、とにかく「厳しい」ことが強調されていることです。
もしも、私が原稿のとおり話していたら、あっちでも「厳しい」、こっちでも「厳しい」と触れ回ることになります。
副市長、局長など幹部のみなさんが、もしも原稿にあるように、厳しい、厳しい、と言っているとしたら、市役所全体として、市民に対して、ずいぶん元気が出ないメッセージを発し続けていることになっているのではないでしょうか。
行政に携わる者には、根拠のない楽観論を戒め、状況を冷静に見極めることが求められます。
しかし、このことは、あちこちで「厳しい」を連発することで果たされるものではないはずです。
それぞれの分野において生起している事象を客観的に観察し、その事象の背後にある要因を冷静に分析することが大事ではないかと思います。
たとえば、人口減少時代における将来の都市像をつくる前提として、人口トレンドの要因を分析するため、有識者会議を設置して議論を進めてきましたが、たいへん有意義な分析結果が提示されています。
また、昨年暮れには、神戸市の小中学生の学力の現状について、雪村新之助教育長をはじめ教育委員会幹部のみなさんから説明を受けましたが、実証的な分析を含むたいへん説得力がある内容でした。
市役所のみなさんには、行政のプロの目で冷徹に現実を見つめ、その背後のある課題を摘出し、実効性のある政策の選択肢を提示していただくことを期待しています。