久元 喜造ブログ

有害動物を殺す悲しみ

鹿が、神戸市内にも入り込んできているという情報が、たくさん寄せられています。
市街地に近い藍那でも目撃されていますし、3月24日 のブログでも記しましたように、明石海峡公園内で、繁殖している可能性があります。
六甲山系の中に鹿が入り込み、繁殖すると、手がつけられなくなります。
丹沢山系では、鹿が植物を食い荒らし、山腹崩壊をもたらしたり、ヤマビルをまき散らし、人間にも吸血危害が及んでいますが、六甲山系でも、そのような事態が起きかねず、そうならないうちに、駆除しなければなりません。
yamabiru
しかし、鹿のように可愛い動物を殺すことについては、感情的な反発が出る恐れもあります。
イノシシの場合でも、駆除することについては、抗議が寄せられます。

愛らしい動物を殺す悲しみと向き合うことを考えるとき、想い起こすのは、ローリングスの『子鹿物語』です。
舞台は、フロリダ半島、山の中の開拓地。
ある日、主人公の父親が森の中でガラガラ蛇に咬まれ、応急手当のために鹿を撃ち、肝臓を取り出して毒を吸い出します。
鹿のそばには、生まれたばかりの子鹿がいました。主人公の少年は、子鹿を育て始め、小鹿と仲良く遊びながら、内向的な性格を克服していきました。
しかし、子鹿は大きくなるにつれ、野生の本性を顕し始め、畑の作物を食い荒らすようになります。森の中の開拓地に生きる一家にとり、これは死活問題でした。
森に捨てに行っても、子鹿はそのたびに戻ってきて、畑を荒らします。
さまざまな葛藤の末、子鹿は結局、射殺されることになりますが、深く傷ついた少年は、家出してしまいます。
物語は、少年が悲しみを克服し、両親の元に戻るところで終わります。

鹿の急増の報に接するとき、『子鹿物語』に涙した子供の頃を想い出します。