久元 喜造ブログ

「特別自治市」について③(域内分権)

きのう、6月21日のブログ では、指定都市における域内分権の必要性と、その一方策としての区長の権限強化について記しました。

「特別自治市」においては、都道府県と同じ広域自治体としての地位を併せ持つことになりますから、住民の意思を的確に反映させるための制度設計は重要で、「域内分権」の必要性はさらに大きくなります。

「特別自治市」と類似の仕組みは、一度、制度化されたことがあります。1947年に制定され、憲法と同じ日に施行された地方自治法では、「特別市」の制度がありました。
都道府県の権限を併せ持ち、都道府県の外に置かれる点で、「特別市」は、「特別自治市」と基本的に同じ制度でした。
当時の「特別市」の規定を見ると、「特別市」に置かれる区の区長は、住民が直接選挙することとされていました。これは、住民の身近なところで民主的正統性を有する機関が必要と考えられたからです。

しかしながら、人口集中地区が広がり、一体的な行政運営が求められる大都市において、内部にそれぞれ直接公選の区長が存在することは、特別市の市長や議会と意見が衝突することにもなりかねず、デメリットの方が大きいと思います。
域内分権を考える上で重要なことは、むしろ、「特別市」議会の内部に、区単位の区議会を置くことだと思います。「特別市」議会に区単位の常任委員会を設置し、事実上の区議会とすることも考えられるでしょう。
この場合、区長は、区議会、あるいは「特別市」議会の同意を得た上で、市長が選任することが考えられます。

いずれにしても、「特別市」においては、現行の指定都市以上に、区で完結するような仕事は、できるだけ、区長や区議会で決定していくようにしていくことが大切です。
同時に、そのような「域内分権」とのバランスを取りながら、「特別自治市」全体としての一体的な都市経営が可能となるような設計を目指すべきだと思います。