久元 喜造ブログ

岩尾俊平『世界は経営でできている』


よく売れている新書だそうです。
目次を開くと、「〇〇は経営からできている」の〇〇に、日常、貧乏、家庭、恋愛、勉強、虚栄、心労、就活、仕事、憤怒、健康、孤独、 老後、芸術、科学、歴史、人生の17の文字が入ります。
要するに、どんなことでも「経営」という言葉で説明できるということなのでしょう。
それでは著者が言う「経営」とは、何なのか。
冒頭、「ここでいう経営はいわゆる企業経営やお金儲けを指していない」と断りを入れ、「この本は経営概念そのものを変化させる書であり、日常に潜む経営がもたらす悲喜劇の博物誌でもある」と宣言されます。
「経営」をキーワードに、「不条理と不合理」から抜け出すヒントを読者に与えてくれる本なのだと、勝手に理解して読み始めました。

よく引用されているのは、「組織の上層部は無能だらけになる」理由です。
現代の官僚制組織においては、「複数の職階において求められる能力はそれぞれ異な」ります。
すると、「特定の職階では優秀だったが次の職階では優秀でない人」が多数いることになり、「さらに上位の職階に進まずに適性のない職階にとどまることにな」るのです。

「日はまた暮れる:すべての人が、知らず知らずのうちに無意味な仕事を作る」も面白かったです。
激安品を血眼になって探す時間分の給料の方が、激安品によって節約される経費よりも高いと。
確かに。
私も、ある自治体で予算査定に関わったとき、年末の日曜日に、報酬単価の庁内バランスについて延々と議論が行われていたことがありました。
その議論の結果、査定によって削減されたのは、72万円。
全員の給料と時間外勤務手当の方が多いかもしれない、と内心呟いたのでした。