今夏、夏休みは3日いただき、週末も使って3冊の本を同時に読み進めました。
・ジェフェリー・ロバーツ『スターリンの図書室』
・山内マリコ『マリリン・トールド・ミー』
・佐藤卓己『言論統制』増補版
あえて、性格の異なる本を選んだのですが、結果的には、共通点があることに気づきました。
流布しているイメージとはかなり異なる人物像が、次第に浮き彫りになっていったのです。
「大テロル」を引き起こし、「史上最も血にまみれた独裁者」スターリン。
粗野で暴力的、およそ知識人とはほど遠いイメージで捉えられがちですが、本書で描かれるのは、「本の虫」です。
「熱心な読書家であり、自己を向上させる情熱の持ち主」でもありました。
若い頃から、マルクス、エンゲルス、レーニンの著作、そしてロシアや外国の小説も熱心に読み耽りました。
指導者として多忙を極める中でも、読書に没頭しました。
マリリン・モンロー。
『紳士は金髪がお好き』などからは、「金髪でおバカさん」のセックスシンボルとして語られてきました。
本書が女子大生を通じて提示するのは、「内気で、読書家で、職業的な向上心もあり」、「大手映画会社による支配的な産業構造に、一人で立ち向か」う姿です。
厳しい言論統制で、泣く子も黙る存在と恐れられた陸軍の情報官、鈴木庫三。
戦後に刊行された小説などでは、無教養で強圧的、サーベルを振りまわす粗暴な人物として描かれてきました。
増補版では、 宴会に明け暮れる大多数の陸軍将校を尻目に、読書と執筆に勤しむ日々が描かれます。
座談会での発言、プロレタリア作家を含む文化人などとのやり取りからは、知的で正直な人物像が浮き彫りになっていきました。