「新しい時代には、新しい政治学が必要である」。
トクヴィルのこの言葉から始まります。
『アメリカのデモクラシー』は以前に読んだことがあり(2016年6月12日のブログ)」、ある種の親近感を持ちながら読み始めました。
本書では、民主主義の考察に関する関心が選挙に向かいがちであるとの反省に立ち、「あえて行政権、あるいは執行権における民主主義の可能性について踏み込んで論じ」られます。
選挙で選ばれ、行政権の一翼を担っている自分にとり、とても興味のある視点です。
「第3章 行政府を民主化する」は、とても新鮮な内容を含んでおり、「官僚や公務員を人間に戻す」という指摘にはとりわけ共感を覚えました。
トクヴィルが感銘を受けた米国のタウンシップでは、普通の市民が「自由に援け合い」ながら、自分たちの課題を解決しようとしていました。
本書は、このようなありようを現代において再現できるかと問いかけ、DXを有効に活用し、公務員がファシリテーターとして直接つながる方向性を提示します。
神戸市が数年前から試みている「地域貢献応援制度」は、職員のみなさんに地域社会の中で市民として活動し、そこから得られる経験を職員としての仕事に反映してもらうことを狙いとしています。
それぞれの行政分野のプロである神戸市職員が、普通の市民としての経験を積み、市民のためにより良い仕事をしてほしいという願いを込めています。
民主主義に到達点はなく、日々進歩するテクノロジーを活用しながら、さまざまな「実験」を通じて進化していく営みであることを再認識することができました。
「実験」の舞台として、神戸市のような基礎自治体が最適であることは確かです。