日本から海外への移住が、最近よく話題になります。
本書では、なぜ日本を離れるのか、移住先ではどんな生活が待っているかなどについて、オーストラリア在住研究者の著者が分かり易く解説してくれます。
初めに、どのような日本人が海外に赴き、滞在しているのかが示されます。
興味深かったのは、海外移住者には女性が多く、特にカナダ、豪州に出ていく女性が多いことでした。
デジタルノマドが増え、国境を越えて働く若い世代が増えています。
ノマド化する若者たちが選択するのは、ワーキングホリデーです。
豪州は特に人気で、著者はその意義を評価しつつ、日本から来る若者が農業の労働力不足を補う手段となっていること、ホストファミリー宅に住み込んで家事・育児のサポートをする「オーペア」でのセクハラ、パワハラについても触れています。
そこには、異国で「忍耐する若者たち」の姿がありました。
移住者への差別、年金・医療の問題など海外移住の影の部分も紹介されます。
この2国に限らず、各国政府は、科学技術や金融面などでの国際競争力を高めるため、海外からの人材を積極的に受け入れようとしています。
日本の研究者や技術者が、知識やスキルを海外で活かしたいという動機で海外に移住する事例も数多く報告されます。
日本での長時間労働に嫌気が差し、家族との生活を大事にするために豪州やシンガポールに移住した事例も紹介されます。
潤沢な研究費と恵まれた設備に惹かれて、海外の大学、研究所に移る研究者もいます。
日本の富裕層が、災害などからの「リスク回避」と節税のために移住していく様子も示されます。
海外移住の実態から、改めて日本の現実を見せつけられる思いがしました。