昨年に読んだ雑誌『世界』の8月号に、マンション管理に関する興味深い論稿がありました。
法政大学の五十嵐敬喜名誉教授『マンションは生き延びられるか?』です。
著者は、マンションの管理に関する厳しい現実に触れた上で、「マンション管理組合が機能せず、計画や資金管理計画がうまくいかず廃墟となれば、それは地域にとっても迷惑なだけでなく、ひいては自治体の莫大な負担になる」と指摘します。
解決策として提言されているのが、地方自治法に規定されている「地域自治区」の活用です。
マンション管理組合が総会の議決を得て、地域自治区に加入し、コミュニティを発展させていく方向性が提示されています。
「地域自治区」は、平成の大合併に終止符が打たれたとき、市町村を区域に分け、その区域の住民の意見を市町村行政に反映させるために設けられた制度で、私も制度創設に関わりました。
校区などを単位として設置されることが想定されており、事務所が置かれてその長に自治体職員が任命されます。
事務所長のもとに「地域協議会」が置かれ、市町村長などに意見を述べることができます。
マンションの管理組合が「地域自治区」に参加する方法は、地域協議会の構成員になることだけなので、マンション管理に関する課題を解決する手段にはならないと思います。
しかし、マンション管理に地方自治制度を活用するという著者の提言は新鮮です。
現在のマンション管理組合の制度だけでは、タワマンのような多数の区分所有者の合意を形成することは困難だと考えられるからです。
将来的には、大規模なマンションの管理組合を特別地方公共団体として地方自治法に位置づけることなどが考えられます。