久元 喜造ブログ

水谷竹秀『国際ロマンス詐欺』

SNSやマッチングアプリで恋愛感情を抱かせ、金銭を騙し取る「国際ロマンス詐欺」。
被害の急増が報じられています。
本書は、その赤裸々なルポルタージュです。
2023年9月号のWedge で、紹介記事を読みました。

日本や米国などの被害者は、会ったこともない犯人にどうして騙されてしまうのか。
被害者それぞれの経験が語られ、それらからは孤独な心理に付け込む詐欺犯の「手口」が見えてきます。
国際ロマンス詐欺犯は、西アフリカを中心に世界中にいます。
YouTubeには、ロマンス詐欺に成功した長者「ヤフーボーイ」が踊り歌う動画も掲載されています。

著者は、被害者からの聞き取りの後、ロマンス詐欺の「発祥の地」ナイジェリアに飛びます。
ギニア湾に面した港町ラゴスは、人口約1500万人の巨大都市です。
活気と喧騒に溢れていました。
旧知の大学教授、アダム氏にヤフーボーイを紹介してもらい、試みたインタビューがとても興味深いものでした。
ほとんどが大学に通う現役の学生たち。
大学での学業とロマンス詐欺による小遣い稼ぎという「二足のわらじ」を履いています。
逮捕されれば、ナイジェリアのサイバー犯罪取締法によって禁錮5年以内、もしくは罰金1000万ナイラ(約170万円)を科される可能性があります。
それでも、大学生たちにとっては手軽にカネを稼げる収入源です。
つつましいナイジェリアの学生たちの日常が紹介され、動画で豪遊しているヤフーボーイとはまた異なる現実が描かれます。

孤独の中でロマンスを夢見る日本の人々、そしてしたかたかにネットで違法に金を稼ぐグローバルサウスの若者たち。
いま進行している現実が、鮮やかに描かれていました。