著者は、本書の刊行当時、東京本社科学医療部に所属する朝日新聞記者です。
タイトルは、テレビ東京の「緊急SOS!池の水をぜんぶ抜く大作戦」から取られています。
最近はテレビ大阪であまり放映されていませんが、私もよくこの番組を見ていました。
放送内容は、池から水とヘドロを排出し、出演者が泥の中を格闘して魚やカメなどを捕まえ、外来種と「在来種」をより分け、外来種は駆除、「在来種」は池に戻し、池を綺麗にするというものです。
一種の「かいぼり」です。
タレントが泥まみれになりながら格闘し、カミツキガメなどを捕獲するシーンが出てきます。
センセーショナルな字幕が頻繁に現れ、大音量の効果音が使われています。
著者は、番組が「かいぼり」の認知度を高めた点を評価しつつ、いくつかの疑問を呈します。
まず番組が外来種を一律に「悪者」扱いしている点です。
「生態系や人の社会にリスクがあるか」という観点が重要だと。
また、番組の池を抜く作業は1回限りですが、「かいぼり」は、地域が主体的に、継続的に取り組む必要があると指摘します。
そして、外来種を宿敵扱いする番組制作の姿勢を批判します。
この番組を扱っている箇所は、全体の中のわずか10ページ足らずで、生き物に関して近年起きている事象が幅広く紹介されています。
特にネット空間での生き物の売買の実体には、改めて驚きを禁じえませんでした。
神戸市は「里山SDGs戦略」を策定し、この中で、市民との協働による外来生物対策や「かいぼり」の実施、在来生物の保全などを掲げています。
生き物との距離も大事です。
本書で紹介されている豊富な事例や課題は、この戦略を推進していく上で参考になりました。