スピノザ(1632-77)の哲学の一端に触れたいと思い、本書を紐解きました。
著者は独特のアプローチでスピノザの哲学を読者に提示していきます。
副題は「読む人の肖像」。
先人の著作を読み、悩み、考えながら、自らの哲学を形成していった過程が語られます。
若きスピノザは、デカルトの『哲学原理』(1644年刊行)を読み、『デカルトの哲学原理』を執筆しました。
スピノザによれば、デカルトは自分が考え得るものをすべて疑い、「疑ったり考えたりする限りでの」自分を発見し、次の言葉を発します。
「私は疑う、私は考える。故に私は存在する」。
「私は考える、故に私は存在する Cogito,ego sum」。
「コギト命題」として知られるこの命題こそ、一切のものがその上に構築されるべき第一の真理です。
スピノザは、第一命題がいかなる命題も前提としていないはずであるにも関わらず、大前提が存在している矛盾を指摘し、「私は考えつつ存在する」という単一命題を得ます。
続いて「準備の問題」の章が置かれ、スピノザの代表作『エチカ』について語られるのですが、その内容は、著者渾身の努力にも関わらず、かなり難解でした。
また改めて読み返してみたいと思います。
『エチカ』の執筆は中断され、執筆されたのが『神学・政治論』でした。
冒頭「哲学する自由を認めなければ道徳心や国の平和が損なわれる」と強く主張し、宗教を肯定した上で、迷信がどこから生まれるのかなどの考察が行われます。
スピノザの論理は明快で、政治のありようなどを含め、新鮮な視点を提示してくれているように感じました。
現代に生起する現象を考える上でも、有益な示唆を得ることができました。