加藤隆久生田神社名誉宮司の近著です。
「まえがき」で記されているように、近年、宗教に対する関心の高まりが見られます。
きょう日曜日は各紙とも書評を掲載しますが、宗教への関心に関する特集を編んだ新聞もありました。
加藤名誉宮司は、人間と神との関わりを神道の見地から説かれます。
そして神社が「ご縁や支え合いの絆の回復」という役割を担ってきたことを指摘されます。
自然環境の保護からの神道の意義について、「自然は征服するものではなく、共生するものだという伝統的な自然観が見直されてい」ると記しておられます。
鎮守の杜が市民に憩いの場所を提供し、多様な生き物たちを育んでいることは、日頃から感じているところです。
加藤名誉宮司は、神戸の歴史について幅広く、深いご見識をお持ちで、本書でも古代から現代に至る神戸の歴史についても語られます。
とりわけ強調されるのが神戸が「国際宗教都市」であるという視点です。
明治2年にカトリックの教会堂が居留地に献堂され、ロシア正教会、聖公会の教会が建てられました。
プロテスタントでは、明治4年に神戸ユニオン教会が、続いて栄光教会が建てられ、関西学院が創立されました。
中国人は関帝廟を、インド人はジャイナ教寺院、ヒンズー教寺院、シク教寺院を、トルコ人は現存する日本最古のモスクである神戸モスクを、ユダヤ人はシナゴーグを、と多くの宗教施設が創設されました。
これらを中心に宗教コミュニティが形成され、まさに国際宗教都市の様相を呈するようになったと言います。
異なる民族、宗教、文化的背景を持つ人々がともに暮らしてきた神戸の国際都市としての性格は、今日に至るまで脈々と受け継がれていると感じます。