久元 喜造ブログ

佐藤 優『よみがえる戦略的思考』


ウクライナ情勢は、日々刻々と変化しています。
本書が刊行されたのは、昨年(2022年)10月ですが、ロシアのウクライナ侵攻から1年余りが経った今日において、終戦の気配が見えないという状況は変わっていません。
本書は、我が国の対ロシア外交、ウクライナが置かれてきた歴史的な立ち位置に触れた上で、解決に向けた視座を提供しようとします。

著者が冒頭に取り上げるのは、「価値の体系」「利益の体系」「力の体系」という三つの要素です。
そして、我が国においては「価値の体系」が肥大化しており、そのためか日本のマスメディアのほとんどが欧米メディアからの二次情報を報じていると指摘します。
そのような問題意識から、著者がかなりの紙幅を費やして紹介するのが、ロシアの政府系の番組「第1チャンネル」が放映している「グレート・ゲーム」です。
この番組には、ロシアの学者、対外諜報庁中将のほか、米共和党系シンクタンクの所長でソ連からの移住者、米国籍のドミトリー・サイムズ氏も参加しています。
ロシアの専門家二人は米国の政治、経済、世論の動向をそれぞれの立場から把握し、サイムズ氏と活発な議論を繰り広げます。。
この番組は、ロシアの対外宣伝工作の任務を帯びているとともに、「クレムリン(大統領府)が諸外国にシグナルを送る機能を果たしている」とされます。
米国籍の専門家も参加した議論からどのようなメッセージが発せられるかについては、注目する価値があるように思えます。
ロシアのウクライナ侵攻が理不尽なものであることは、明白です。
その上で、ウクライナ情勢に関する幅広い議論に接したうえで、多角的な視点に立った分析が求められるように感じました。