太平洋戦争中の作戦の中で最も無謀とされ、多数の戦死者、餓死者を出したインパール作戦。
テレビのドキュメンタリーでもときどき取り上げられ、その実像はどのようなものであったのか、以前から関心を持っていたので、「インパール作戦の”常識”を覆す」という帯に引かれ、購入しました。
読み始め、すぐに違和感を覚えました。
「序章 陸軍のメカニズム」で展開されるのは一般的な軍隊組織や戦争論ばかりで、インパール作戦を理解する上で前提となる日本陸軍の組織や指揮命令系統などに関する具体的な説明はほとんどなかったからです。
そして続く章が「牟田口廉也の実人物像」。
生い立ちから亡くなるまでの生涯が軍歴を中心に語られ、「指揮官として数多の重要な作戦で日本軍の勝利に貢献した」「参謀としても若い頃から実践的な活動の場を与えられ、高い評価を受けてきた」と小括されます。
本書の中心を為すのは、もちろんインパール作戦です。
1942年(昭和17年)5月に作戦が着想され、紆余曲折を経て命令として伝達され、実施されるまでの複雑で長い経緯が、東條首相、大本営参謀、南方軍、ビルマ方面軍の間の折衝の模様も含め、語られていきます。
作戦が開始されてからの説明には多くの頁が割かれますが、挿入されている地図と本文との対応関係もわかりにくく、作戦の展開を追うのにてこずりました。
作戦に関係した将校の言動も数多く取り上げられますが、著者の批判が随所に盛り込まれ、客観性に疑問を抱かせる引用のように感じました。
残念ながら、史実に基づき牟田口を擁護したいという著者の意図は、構成や叙述のまずさもあり、説得力を持って伝わっては来ませんでした。