劇作家・演出家、平田オリザさんの著書です。
「まことに小さな国が、衰退期をむかえようとしている」という刺激的な一文で始まります。
違和感をつ持つ方もおられると思いますが、我が国が置かれている状況に幻想を抱くことなく、現実を真正面から見つめ、解決の糸口を見出そうとする真摯な姿勢が感じられます。
平田オリザさんの真骨頂は、ご自身の考え、姿勢を分かりやすく説くだけではなく、多くの人々を巻き込み、動きをつくり、実践して来られたことです。
本書では、瀬戸内・小豆島、但馬・豊岡、讃岐・善通寺、東北・女川などでの実践事例が紹介されます。
小豆島町の取り組みでは、世界的に知られる瀬戸内国際芸術祭と地域との関わりが紹介されます。
小豆島町ではIターンの移住者が増えているそうですが、その多くは、瀬戸内国際芸術祭をきっかけに小豆島を訪れ、縁が出来たといいます。
豊岡で紹介されるのは、「コウノトリの郷」づくり。
豊岡市は、コウノトリの復活とともに、農家と交渉を続け、無農薬・減農薬の田んぼを広げていきました。
コンクリートで固められた用水路を土に戻し、小動物が行き来しやすい環境もつくりました。
このような田んぼでつくられたお米は、「コウノトリ育むお米」としてブランド化に成功します。
さらに豊岡での画期的な取り組みが、城崎国際アートセンター です。
千人規模のコンベンションセンターが兵庫県から豊岡市に払い下げられました。
お荷物だった施設は、当時の中貝宗治市長の方針の下、平田オリザさんが加わる形で、滞在型アートセンターとして生まれ変わります。
我が国では試みられることがなかったアートインレジデンスが、ここに誕生したのでした。