久元 喜造ブログ

大原瞠『住みたいまち ランキングの罠』


各方面からさまざまな都市や自治体のランキングが発表されます。
自分のところがどの辺に位置しているか、自治体関係者としては気になるところです。
上位に位置していれば、市民や内外に広報したくもなるのが人情です。

著者は、このようなランキングがもてはやされるのは、日本の人口が減り始めた現在、どの市区町村も人口減少による衰退を避けるため、新たな住民獲得と既存住民の流出抑止のためにさまざまな分野で住民サービス競争を続けていることが背景にある、と指摘します。
旗を振っているのは、市区町村長です。
選挙では「近隣市区町村に負ける負けるなで、背伸びした住民サービスを謳うマニフェストを掲げて」当選。
そして、財政を悪化させても、自分が2~3期のうちはなんとかなるが、自分がいなくなった後は知らない。
「まさに食い逃げ状態」だと。
そんな現状に「心を痛めているのが、各市区町村の心ある行政職員たち」です。

本書では、そのような”不都合な真実”に光が当てられます。
子育て、安全・安心、文化ホールやスポーツ施設、図書館、鉄道の利便性、迷惑施設、公営競技(ギャンブル)、都市イメージなどさまざまな視点からランキングの信ぴょう性について議論が進められていきます。
子どもの医療費も取り上げられます。
著者によれば、「小学校高学年から子どもが扶養家族を外れるまでの10年ほどが、一般的に一番医療費がかからない時期」。
どこに住まいを決めるのかについてはさまざまな要因があり、「医療費助成に目を眩ませることなく、住むまちを選んだほうが賢いといえないでしょうか」と。
議論のあるところでしょうが、こういう見方もあるのか、と新鮮に感じました。