以前ブログで紹介しました『スターリン』は、知らなかった旧ソ連の実態を教えてくれるとともに、すでに知られている事件や状況について別の観点や視点を提供してくれます。
たとえば、日ソ間の紛争や外交交渉について、旧ソ連で何が起こり、どう対応したのかについて興味深い記述が多々ありました。
その一つが、 張鼓峰事件 です。
1938年夏、ウラジオストクから南西に120キロほどの沿海部にある満ソ国境の小高い丘陵で日ソ両軍部隊が激突。
翌年には、満洲国とモンゴルの国境でノモンハン事件が起きています。
張鼓峰事件の作戦を指揮したのが、ヴァシーリー・ブリューヘル元帥(1889 – 1938)でした。
彼は、この地域に住む朝鮮系住民に被害が及ぶのを恐れ、日本軍を攻撃するのに飛行機の使用をためらったようです。
これに対し、スターリンは次のように述べ、「決定的行動」を要求しました。
「爆撃が朝鮮人住民を傷つけかねないことへの危惧の念や、軍用機は霧のために任務を果たせないとの恐れも、私には理解できない」
「日本との戦争の時に、貴官が朝鮮人住民を傷つけることを、誰が禁止したというのか?」
「日本側が人民の多数に攻撃を仕掛けている時に、なぜ貴官は朝鮮人に気を遣おうとするのか?」
張鼓峰事件は、ソ連の勝利に終わりましたが、赤軍部隊の戦闘準備態勢などの欠陥も明らかになりました。
ブリューヘル元帥は逮捕され、残酷な拷問を受けて虐殺されました。
『スターリン』では、独裁者の理不尽な行為を制止しようとした党幹部、軍人などが排除され、処刑される場面が数多く出てきます。
少数民族への迫害もたびたび行われ、数多くの犠牲者を出したのでした。