久元 喜造ブログ

澤章『ハダカの東京都庁』

帯には「元幹部が”女帝”のタブーを明かす」とありますが、内容の大部分は、東京都庁の実態です。
著者は、都庁の人事課長、知事本局計画調整部長、選挙管理委員会事務局長などを歴任した人物。
豊洲の中央卸売市場移転問題のさ中には、市場次長の要職にありました。
いわば都庁の本流を歩んで来た幹部だけに、書かれている内容にはリアリティがあります。
人事、昇進、マスコミ対応、議会対応、職員気質などが具体的に語られていきます。
都庁は言うまでもなく巨大官僚組織。
あの周囲を睥睨する庁舎が象徴するように、周りとは隔絶された世界のようです。
そこでは、外の世界では考えられないような風習や慣行が跋扈します。
規模は違いますが、神戸市役所にも見られてきたような特異な世界がこれでもかと展開されます。
いわば「究極の役所グロテスク」、あるいは自治体にとってのディストピアとでも表現すれば良いのでしょうか。
こういう風になってはいけないという見本が鮮やかに提示されますが、流石に優秀な人材が集まっているだけあって、参考になる部分もたくさんあります。

「なぞ多き都庁の深部へ」の章では、知事執務室の様子が描写されます。
外から見るとバルコニーの奥に位置する知事執務室。
執務室のある7階だけは、天井が他の階の2倍ほど高くなっているそうです。
テーブルや座席の配置、知事説明における幹部の行動などが具体的に説明されます。
小池知事の振る舞いにも言及されますが、興味のある方は本書をお読みください。
鈴木俊一知事から小池百合子知事までの「歴代知事」評も興味深かったです。
著者は石原慎太郎知事のコピーライターもされたようで、文章はわかりやすく、簡潔です。