経済学、都市工学、都市景観など学界のほか、弁護士、不動産鑑定の実務家など15名の専門家による共著です。
最後に座談会が掲載されており、登場される先生方の中の戎正晴先生、齊藤広子先生は、神戸市の「タワーマンションのあり方に関する研究会」に参画していただきました。
タワーマンションについて、さまざまな観点から考察が行われます。
コンパクトシティ実現に寄与するのか、廃墟化の可能性、供給過剰なのか、投資の観点、居住性、コミュニティ形成の観点、子育ち・子育てなど暮らしやすさ、エレベータが止まったときの対応、管理不全の可能性、修繕積立金など管理面の課題、建て替えの可能性などです。
頭からタワーマンションを否定するのではなく、管理組合の運営方法、管理組合以外の管理方式など具体的な提案がなされており、タワーマンションを含むマンションの管理の在り方について参考になります。
同時に、持続可能性についてさまざまな問題があることが改めて浮き彫りになります。
50年、100年後に廃墟化する可能性は否定できず、その大きな理由は維持管理のハードルが高いことです。
高層マンションでは大規模修繕工事にかかる費用が割高になることが説明されます。
修繕積立金が適切に積み立てられず、修繕やリニューアルが適切に行われなければ、住宅としての性能が損なわれ、資産価値が劣化します。
逆に維持管理コスト高から修繕積立金が引き上げられていけば、同様の築年の中高層マンションより中古市場で劣勢になると指摘されます。
購入後10~15年で売り抜けるべきだという指摘もなされており、このことは持続可能性への疑問を端的に示しているように感じました。