政府提出法案の条文ミス多発が問題になっています。
多くの報道に接しながら、総務省自治行政局長のときの出来事をほろ苦く思い起こしています。
もう10年以上前のことですが、私が責任者として作成した法案が国会に提出されて間もなく、職員が局長室に飛び込んできました。
法案の中にミスが見つかったというのです。
ミス発見のきっかけは、総務省のホームページを見た一般の方からのメールでした。
「改め文」の引用の範囲が間違っていると指摘してくださっていました。
さてどうするのか。
通報してくださった方は善意で注意をしてくれたのでしょうから、無視してやり過ごす選択肢もないわけではありませんでした。
しかし通報があったにもかかわらず対応しなかったことが表沙汰になれば、それこそ取り返しのつかないことになります。
法案の内容に関わるものではない形式的なミスとは言え、誤りは誤りです。
迷いに迷った末、条文訂正の手続きに入ることにしました。
すぐに原口一博総務大臣に報告しました。
厳しく叱責されてもおかしくはなかったのですが、そのようなことはなく、事後処理を迅速に行うよう指示を受けました。
それから官房長官をはじめ官邸の中枢、そして与野党のたくさんの国会議員各位を回り、頭を下げ続けました。
頭ごなしに怒鳴りつけられることはありませんでしたが、与野党対立の中で条文ミスは政府の大きな失態とされ、衆議院総務委員会の審議はストップしました。
何とか条文訂正で済みましたが、一時は更迭されることも覚悟しました。
あのときのことを振り返ると、条文ミスを防ぐためにやるべきことはあるでしょうが、完全になくすことは無理ではないかと感じます。(続く)