久元 喜造ブログ

都染直也『ことばのとびら』


甲南大学文学部日本語日本文学科・都染直也教授のご著書です。
都染先生が主宰される甲南大学方言研究会は、このほど令和2年度神戸市文化活動功労賞を受賞されました。
本書の内容は、映画『砂の器』で重要な意味を持つ東北弁に関する検証など多岐にわたりますが、興味深かったのは、神戸をはじめとする関西圏における方言の研究です。
大阪弁と神戸弁の境界は、東灘区本山町と御影町の間にあるそうです。
また、関西弁地域は神戸をはじめとする摂津地域であり、同じ兵庫県内でも姫路などの播州では関西弁とは異なる播州弁が使われ、その違いは敬語表現にあると説明されます。
「べっちょない」は、播州弁を代表する言葉であることは私も知っていましたが、淡路、丹波でも使われているそうです。
神戸市内でも、西区などでは「べっちょない」と話す方にときどき出会います。
神戸市内でも、地域によってかなり異なる言葉が使われていたのでしょう。

フィールドワークも活発に行われ、その成果が紹介されています。
たとえば、JR山陽本線、播但線、神戸線の各駅毎に「ハラガタツ」「ハラタツ」「ゴーガワク」「ゴガワク」「クソッパラガタツ」などがどこで使われているのか調査されました。
年代によっても言葉遣いがかなり異なることがわかります。

本書は、神戸新聞夕刊の連載をもとにまとめられ、2006年(平成18年)に出版されました。
「はじめに」で著者は、「ことばは生き物で、常に変化をつづけています」と記しておられます。
本書が刊行されてからそんなには経ちませんが、関西の言葉も既に刊行時とは少し違ったものになっていると思います。
そしてこれからも変化していくことでしょう。